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ただの人間には興味ありません。 この中に、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、私のところに来なさい。以上。 原作・谷川流、イラスト・いとうのいぢによるライトノベル。レーベルは角川スニーカー文庫。 2003年に第8回スニーカー大賞<大賞>受賞。主人公・キョンによる独特な雰囲気の一人称形式や先の読めない展開が評価された。 同年6月に文庫の1巻が発売され、同時期に角川書店のライトノベル雑誌「ザ・スニーカー」で連載を開始。 現在までに長編・短編集合わせて9巻が刊行されている。 なお「涼宮ハルヒの憂鬱」は上記の賞の受賞作品ならびに文庫1巻のタイトル。 2巻以降は全て「涼宮ハルヒの○○(二字熟語が入る)」のタイトルになっており、一連の作品群は「涼宮ハルヒシリーズ」と呼称される。 最新刊となる予定の「涼宮ハルヒの驚愕」は当初2007年6月1日発売予定だったが、同年5月18日に発売の無期延期が発表。 以後2年以上経過した現在でも発売の目処は立っていない。 2006年に京都アニメーション制作によるテレビアニメが独立UHF局他で放送。 ハイクオリティな作画と、時系列シャッフルをはじめとする様々な仕掛けが話題を呼んだ。 また当時サービスを開始した動画共有サイト・YouTubeに本編がUPされた事で深夜アニメを普段観ない低年齢層からの支持も得るようになり、 動画共有黎明期に「ネットでアニメを見る」というスタイルをユーザーに定着させた先駆者的な存在である。 2007年に開設されたばかりのニコニコ動画にも本編がアップロードされ長らく削除される事は無かったが、 2008年に入ると角川グループにより本編及びMADの削除が見られるようになった。 しかしその後角川グループが動画の宣伝効果を考慮した方針転換を見せた事で削除基準が緩和されたため、 現在も同社の「らき☆すた」などと同様MADの多くが残っている。(ただし本編の丸上げ等は当然ながら削除対象である) 原作のエピソードの一部をアニメ化しなかった事から続編及び未放送エピソードのアニメ化を求める声は大きかったが、 2007年7月7日に「新アニメーション(*1)」の製作が発表された。 それ以降はスピンオフ作品として「涼宮ハルヒちゃんの憂鬱」及び「にょろーん☆ちゅるやさん」がYouTubeにて配信されたものの、 肝心の本編の2期については長らく放送予定が発表されなかった。 そんな中で2009年4月に「涼宮ハルヒの憂鬱、改めて」と称し再びアニメの放送が開始。 当初は1期を時系列順に再放送するものと思われていたが、同年5月21日(最速地域)の第8話にあたる放送で 2006年版でアニメ化が見送られた「笹の葉ラプソディ」が新作として放送。 これにより、2009年版が従来の旧作とこれまで未放送のエピソードを新たに制作したものが混在するアニメである事が明らかになった。 しかし新作として放送されたエピソード「エンドレスエイト」では全く同じ話を8回放送(演出などは微妙に異なる)するなど、またしても賛否両論が巻き起こる問題作となった。 2010年2月6日にはアニメ版の時系列での最終回「サムデイインザレイン」の後の話となる続編「涼宮ハルヒの消失」が劇場公開され、公開一週間で興行収入二億、動員数14万人を記録した。 (ちなみに現在でこそ57箇所まで増えたものの、公開された当時は24箇所しか公開している映画館がなかった。) 2010年4月30日発売の「ザ・スニーカー」にて「涼宮ハルヒの驚愕」の一部先行掲載が決定、単行本は「現在発売日を報告できるよう鋭意作業中」との事。 余談だが、ニコニコRPGが動画投稿されたのは2007年9月~2008年8月の間である。なので本動画で「『エンドレスエイト』のネタを使ってない」などといったとんちきな事は言わないように。 関連項目 キャラクター キョン 涼宮 ハルヒ 長門 有希 朝比奈 みくる 古泉 一樹 谷口 ちゅるやさん 用語 みくるビーム 県立北高校 SOS団 神人 ハレ晴レユカイ 光の壁 閉鎖空間 WAWAWA忘れ物~ 聖谷口領域 白石稔 ● God knows... -- 、 イi i i i i ifミ、 / |i i i i i i トュi ヽ _____ _____ .ィ i i i i i i i i i i i i) | . . . . . . . . . . . . . l l . . . . . . . . . . . . . i /i iイ i i i i 厂 ̄ | . . . . . . . . . . . . . l l . . . . . . . . . . . . . | ヽ i i i i i イ | . . . . . . . . . . . . . l__l . . . . . . . 制 . . | r=彳i i i i iハ | . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .S . . . . . . . . | }i i i i i i i i i i 冫 | . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 作 . . | ⌒|i i「li i 「 | . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .O . . . . . . . | |i i| |i i| | . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . | |i i|│i| | . . . . . . . . . . . . . l─ l . . .S . . . . . . . . | |i i|. !i i! | . . . . . . . . . . . . . l l . . . . . . . . . . . . . | |i i|. |i i| | . . . . . . . . . . . . . l l . . .団 . . . . . . .| イi il }iハ | . . . . . . . . . . . . . l l . . . . . . . . . . . . . | /i i i/ Vi i}  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ¨¨ ¨´
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『涼宮ハルヒのプリン騒動』 ―3日目― 昨日も朝比奈さんのせいでえらいことになりかけたな。 だが朝比奈さんが自分からあんなことをするとは思えん。古泉の差し金か?あるいは長門もなのか? しかし、そのおかげというべきか、またハルヒと楽しく過ごせたのも事実なわけで。 それにしても昨日の別れ際のハルヒの名残惜しそうな顔は反則的なまでに可愛かったな。 ひょっとするとみんな俺のためにあんなことをしてくれてるのか? そうだよな。あいつらにとって俺たちの仲を邪魔する理由なんてないはずだからな。 「はあぁい。どうぞぉ」 部室のドアをノックすると朝比奈さんのエンジェルボイス。そして中にはハルヒ以外の3人+α。 「やぁ!キョンくん、ひっさしぶりだねぇ」 「あぁ、どうも鶴屋さん。お久しぶりです。元気でしたか?」 「もっちろん!このとおり、めがっさピンピンしてるっさ!」 相変わらずこの人は凄いバイタリティだな。 「ところでキョンくん、これを見てほしいっさ!」 鶴屋さんの手にはまたもやというべきか、プリンがちょこんと乗っかっている。……嫌な予感が。 「まさか、またそれもハルヒの、なんてことはありませんよね?」 「そんなわけないっさ。これは鶴屋社の最新作プリンなわけだよ。みんなにはもう食べてもらったよ」 周りを伺うと、朝比奈さんの極上スマイルが見える。 「はいぃ。とってもおいしかったですよぉ」 それにしても鶴屋社?そんなのあるのか?……どうもうさんくさいな。 「キョンくん……食べてくれないのかい?……おねえさんもの凄く悲しいにょろ……」 ちょっ、そんな本気で悲しそうな顔しないでくださいよ。 「わ、わかりました。頂きます。どうもありがとうございます」 鶴屋さんからプリンを受けとろうと手を伸ばす。……が、空振りに終わる。 あの、鶴屋さん?何をなさっているのですか? 「何って?決まってるじゃないかい。早くあーんってするっさ!」 って、ええ!?まじですか?……目はまじみたいだな。 「……してくれないのかい?やっぱりハルにゃんじゃないと嫌かい。……おねえさんめがっさ悲しいっさ……」 「わ、わかりました。頂きます」 「そうかい?それじゃ、はい、あーん」 「は、はい。……あー――」 バタンッ!! うわぁ……タイミング最悪だぜ。というか絶対この人たち狙ってやっただろ……。 ハルヒは明らかに前二日間よりも激しく怒っていた。おもわずハルヒから視線を外してしまう。 「ちょっとキョン?なぁにやってるのかしらね?しかもそれあたしのプリンよね?」 ああ、だよな。やっぱりこれはハルヒのプリンだよな。 「……すまん、俺もちょっとよくわからん」 「何をわけのわからないこと言ってんのよ!……古泉くんどうなってるの?」 「そうですね。まず、僕と長門さんが二人で部室にいると彼がやってきました」 いや、ちょっと待て。すでにそこから違うってのはなんでだ? 「あんたは黙ってなさい!……で?」 「すると彼がおもむろにプリンを取り出しまして、食べる準備を始めたというわけです」 「ふーん、でも古泉くんは当然これがあたしのって知ってたわよね?」 「もちろんです。が、彼に尋ねたところ『ハルヒから許可はもらった』と言われてしまって」 「ふーん。まぁ百歩譲ってその辺はいいわ。で、これはどういうこと?」 そういって固まってしまっている鶴屋さんと俺を指差す。 「鶴屋さんは朝比奈さんと一緒に彼の後に来ました。そして、彼と久しぶり、と挨拶をしているうちに彼が――」 「ちょっ、ちょっと待つっさ!」 突然、鶴屋さんが古泉の説明に割り込む。 「キョンくんは何も悪くないっさ。えっと、そ、そう。あたしが、……そう、あたしが無理矢理やったっさ!」 あの、鶴屋さん?……言ってることは間違ってませんが、ちょっと言い方が。 「だからキョンくんは悪くないっさ。あたしが無理矢理、そう、無理矢理あーんってさせようとしたのさ!」 まるで、というよりも、俺が悪いのを優しい鶴屋さんが必死でかばっているようにしか見えませんけど? 「そうだよねみんな?全部あたしがやったことっさ?」 そう言って鶴屋さんは大げさに周りをぐるっと見回す。 朝比奈さんは首が取れそうなくらいブンブンと首を縦に振っている。 古泉は、そういうことにしておくのが無難ですね?といった表情で微笑んでいる。 長門は何度か俺と鶴屋さんを見比べた後に、 「……それでいい」 と、ポツリと呟いた。 ああ、こりゃだめだ。 「キョン……あんたってやつはぁぁぁ!!!」 「ま、待てハルヒ。待ってくれ。俺の話を聞いてくれ!」 「何が話を聞け、よ。問答無用よ!……そんなことするなんて!」 バタンッ!! そうしてハルヒは部屋を飛び出して行った。 殴られるくらいは覚悟したが、まさかそんな行動をとるとは思わず、俺は立ち尽くしていた。 「何をしているんですか!早く追ってください!」 「早く追うべき」 「キョンくん早く!」 「そうそう、早く行くっさ!」 くそっ、この人たちは!!自分達でやっといてどの口が言うんだよ!? なんて言ってる場合じゃない。このままハルヒをほっとくなんてできないに決まってる。 ……わかったよ。行けばいいんだろ。 「ハルヒっ!!待ってくれ!!」 ハルヒに続いて、俺も部屋を飛び出した。 後ろで、「どうだいっ?めがっさうまくいったっさ」と聴こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。 ◇◇◇◇◇ 『涼宮ハルヒのプリン騒動』 ―3日目(裏)― 「いやぁ、疲れた疲れた。どうだったかい?おねえさんの演技は。抜群にょろ?」 「はい!やっぱり鶴屋さんすごいです。私すごくドキドキしました」 「僕もびっくりです。まさかあそこまでやるとは……。全部アドリブですると聞いたときには驚きましたが」 「そんなに褒められると照れちゃうっさ!何にせよ、面白かったよ」 「いえいえ本当にすごかったですよ。さすが人を欺くのは天下一品ですね。まさに鬼畜の所業でした。」 「……実はあんまり褒められてなかったにょろ……」 「それにしてもお二人、どうなっちゃったんでしょうかぁ?」 「きっと大丈夫」 「そうですね。そこは彼になんとかしてもらわないと困りますからね。しっかりしてくださいよ」 「……自分たちでやっておいてどの口が言うんでしょうかねぇ……」 「……来た」 『嫌よ!離しなさい。あたしは帰るの!』 『いいからちょっと話を聞いてくれ。な、頼む。なんでも好きなの注文していいから。……もう泣かないでくれ』 『うっさい!泣いてないわ。泣いてないわよ!』 『わかった。泣いてない。それでいいから。……で、どれが食べたい?』 『……どれでもいいのよね?……じゃあこれにするわ』 「おっと、涼宮さん、あれを選んでしまいましたね」 「え、なんですかぁ?……えっと『アカシックプリン』……,000!?高いですぅ。おいしそうですね?」 「彼女は騙されている」 「そのとおりです。あれは高値なわりに実はたいした物ではありませんからね」 「それならとなりの『ビッグバンプリン』 0を食べる方がいい」 「そうっさ。あれは微妙だよね。けど一番は右から二番目の『スーパーノヴァプリン』っさ!」 「……なんか全部すごい名前なんですけどなんででしょうか?」 「それはですね。名前を付ける際にこのようにするよう長門さんから頼まれまたからなのですよ」 「……へぇぇ、長門さんの趣味なんですかぁ」 「別に趣味ではない。宇宙人として物に宇宙的名前を付けるということはごく自然なこと」 「そ、そうなんですか。……もうどうでもいいですけど」 「話がそれてしまいましたね。とにかく涼宮さんは騙されてしまったようです。かわいそうなことです。」 「そうだね。あのプリンはホントに地雷と言ってもいいからね」 「それにしてもみなさん詳しいですねぇ?ひょっとしてみなさんも騙されちゃったんですかぁ?」 「…………」 「…………」 「…………」 「おや、どうやらお二人に動きがあるようです」 「え、あ、あれ?また私のはスルーなんですかぁ?」 『悪かったよ。お前のプリン食べちまって』 『そんなこと、……どうでもいいのよ』 『だからもう泣かないでくれって。頼むから』 『うっさい。……泣いてないって、言ってるでしょ……』 『その、……鶴屋さんのもすまん。断りきれなかった俺も悪かったわけだし』 『どうせあんたも、ちょっと嬉しいかも、とか思ってたんでしょ』 『そんなわけないだろ!?俺だって困ったんだよ』 「……言い切った」 「言い切りましたね」 「言い切られちゃいましたねぇ」 「……うぅ、みんなひどいにょろ」 『とにかく、もうあんなことは二度としない。だから……許してくれないか?』 『そんなの……信じられないわ』 「もう、キョンくんったら仕方ないね。おねえさんが助けてあげるっさ!」 「どうするんですかぁ?あ、電話ですか?」 「もしもし、ハルにゃんかい?ほんとーにごめんね。でもキョンくんはハルにゃんには渡さないっさ!!」 「……鶴屋さん、一人で何やってるんですかぁ?」 「ありゃ、ばれちゃったかい?」 「こちらは向こうの映像も見てるんですから、当然ですよ」 「やっぱ、修羅場に入るのはちょっとめんどいかなぁ、なんて思っちゃったりして」 「するならちゃんとすべき」 「……はいはい、わかったよ。じゃあ今からちゃんとやるね」 「ではお願いしますね」 「もしもし、ごめんね。全部あたしたちが仕込んだことなのさ。だからキョンくんは許してあげて」 『でも……キョンは……鶴屋さんに』 「あれはあたしがかなり強引にやっちゃったことだから、キョンくんは悪くないっさ。ね?」 『……わかったわ。……鶴屋さんにそこまで言われたら』 「そうかい?良かったよ。お詫びに明日、年間100個限定のあのプリンをプレゼントするっさ!」 「な、なんですって!?年間100個限定!?まさかあの幻のプリン?」 「まさか。ありえない」 「いや、でもアレしか考えられません。そんな……もし本物なら恐ろしいことになりますよ。」 「えぇぇぇ?一体なんなんですかぁ!?」 「……なんでもない」 「そうです。なんでもないです。あなたは気にしないでください」 「うぅ……ひどいですぅ」 『鶴屋さんなんだって?』 『キョンくんは悪くないから許してあげてってさ。……まぁ仕方ないわ』 『じゃあ俺の言ったこと信じてくれるのか?』 『……今回だけよ』 『良かった。……許してもらえなかったらどうしようかと思ってたぜ』 『……どうでもいいけど、これあんまりおいしくないの。別の頼んでもいい?』 『ええ!?それ,000もしたんだぜ?……わかったよ。今日だけだぜ?』 『ありがと。キョン』 「ふぅ、とりあえず一段落ついたようですね」 「これで計画どおり」 「そうですねぇ。って、明日ってどうなってるんですかぁ?長門さんがするんですよね?」 「そう、準備は万端。しかし、内容はまだ秘密」 「秘密……ですか。ということは明日は長門さんが一人で、ということでよろしいのでしょうか?」 「いい。しかし、あなたには少しだけ手伝ってもらう」 「僕ですか?それはもちろん構いませんが。なんでしょうか?」 「それも秘密」 「明日でおわりなんですよねぇ?ちょっと残念な気もします」 「そうですね。最後は盛り上がるといいのですが」 「ま、きっとなんとかなるっさ!それじゃあたしは帰るね。バイバーイ!」 「じゃあ私たちも解散にしましょうかぁ。また明日」 「……明日」 「それでは、また」 プリン騒動3日目 ―完― ―最終日―へ
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プロローグ 天高く馬肥ゆる秋。俺はこれほど自分の無能さを嘆きたいと思ったことはないね。 なんせSOS団結成の一年生の五月より二年生も折り返しを過ぎた十月まで一年 五ヶ月もの間ハルヒに連れ回されているおかげで環境に対する適応力とかいうや つはそんじょそこらの人よりは身についているはずである。閉鎖空間、雪山、過去、 一種の電脳世界のようなところで巨大カマドウマとも戦った。そんな俺が自分はま だまだ世界を知らないとか言ったら谷口あたりは呆れ返るだろうね、うん。 そういうわけでちょっとやそっとの事態じゃ動揺しない精神を手に得れた俺である がまさかこんな欠点があったとはな。 今俺はハルヒとともに街をさまよっている。ハルヒは不機嫌モード全開で騒いでい る。 「ちょっと!キョン!ここどこなのよ!」 わかるならとっくにホテルに着いているんだがな。悪いが今の俺にはここがどこな のか聞くことも見ることもままならない。 なぜならここは日本じゃないからだ。―――― ―――― 一週間前 「キョン!遅い!こんな大事な会議に遅れるなんて。アンタ団員の自覚あるの?」 今日もわれらが団長涼宮ハルヒは絶好調のようだ。 「わりぃ、わりぃ。掃除当番だったんだよ。」 他の団員は全員そろっている。古泉はいつものニヤケ顔で俺のほうを眺めている し、長門はいつものように本を読む置き物と化している。朝比奈さんはもはや制服と なりつつあるメイド服を完璧にまといつつあっつあつの朝比奈印のお茶を淹れてくれ た。 「ふん。まぁいいわ。今日は一週間後に迫った修学旅行について話し合いましょう。 まず、目標。これはSOS団支部をつくることね。」 これを話し合いと言うのだろうか?一方的な演説みたいなもんじゃないか。これが 話し合いになるのは北の某国くらいじゃないのか?あいもかわらず反論する団員は いないので反論する役割は自動的に俺に回ってくる。 「待て。俺たちの修学旅行の行き先を知っていてそれを言っているのか?」 「当然よ。台湾でしょう?ついにSOS団も世界進出ね。」 「それはそれは。われらがSOS団がワールドワイドな組織になるのに微力でも貢献 できればいいのですが。」 古泉は部下の理想的な返事を返しているし長門はだんまりを続けている。 「えぇぇぇ~。今年の修学旅行は台湾なんですかぁ?去年は北海道だったのにぃ~。」 よく考えたら朝比奈さんは先輩だった。ということは朝比奈さんはこのSOS団台湾進 出計画に参加できないわけか。 「みくるちゃん、心配しなくてもいいわよ。お土産はちゃんと買ってきてあげるから。そう ね~。チャイナドレスなんていいかもしれないわね。」 おいおい。マジか。それには賛成せざるを得まい。メイド服の似合いっぷりも完璧なの だからチャイナドレスも似合うに決まっている。セクシーな朝比奈さんというのもいいか もしれない。新境地だな。 「キョン!何ニヤついてるのよ。どうせまたみくるちゃんで妄想してるんでしょ?このエロ キョン!」 う、図星だ。最近思うんだがハルヒには読心術があるんじゃないか?なぁ古泉。ってい っても古泉も古泉で俺の心を読んでいるような気がするんだがな。って古泉よ、こっちみ んな。ニヤつくな。 「自由行動はこの四人で行動しましょう。不思議探索IN台湾よ。世界は広いわよ。そこら じゅうに不思議が落ちてるかもしれないわね。」 ハルヒは輝くような笑顔で待ちどおしそうに話している。願わくばこのままなにごともなく すんでくれればいいんだがな。 ――――プロローグ Fin 一日目
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高校卒業から10年程が経過した、最近高校時代の夢を良く見る、ひょっとしたら今も夢を見ているのかもしれない 今の俺はただ生きている、無意味な時間を過ごし、一人寂しく生きている 高校時代の友人とはもう連絡を取っていないしあいつに集められた3人ももういない 10年前の情報爆発が原因で皆散り散りになった ニヤケ面したやつ、名前なんだったっけ? そいつはわけのわからない組織と共に行方をくらませた マイエンジェルなどと呼んでいたあの人は、自分の時代へ 本が好きだったあいつは、親元へ還っちまった そもそもの原因はあいつとくだらない事で喧嘩しちまったことだ それは今でも後悔している、あの時の俺はどうかしていたんだ もしも戻れるならあの頃に戻りたいものだ そう考えながら、俺は急激な眠気に襲われ眠りについた 『今回も前回と同じ思考に陥ってくれてるようだね さぁ君の願い叶えてあげよう、あの頃に戻してあげるよ でもその前に少しの間眠ってもらうよ 再び始めよう、無限に続く世界を!! 今回も主人公はジョン・スミス…君だ そして、ヒロインは……』 またこの夢か……。そういえばあいつとの喧嘩、本当にくだらないことだったのか? そうだ、その喧嘩はいつもより酷かったような……、喧嘩した理由なんだっけ? 思い出せないなんでだ、そもそもここはどこだ? それに今はいつだ?細かいことを何も思い出せないどうなってるんだ…… 『おい人間』 そうだ、こんな時は!……誰だったっけ?確かこんな時誰か頼りにしていた奴がいたはずだ 『人間!聞こえていないのか人間!!』 うるさい!俺は今考え事しているんだ!!黙ってろ と言おうとして振り向いたのはいいが誰もいない その代わり一冊の本があった 『ようやく気付いたな人間』 本から声が聞こえる……まさか、ありえるわけ……いやこんなことをしでかすやつを一人知っている 知っているが思い出せない、やれやれ俺はどうしてしまったのかね 『良く聞け人間、汝は邪神により汝自身の未来を閉ざされている 妾はその邪神を追ってここにきた、そして今汝の精神に語りかけておる』 邪神?なんのこった、わけわからんことを並べ立てやがって イライラしていたそのときだ、銀色の髪と黒い瞳をした少女がそこに立っていた 『……あなたは誰?彼に危害を加えるのなら、あなたを敵性と判断し、情報連結を解除する』 今度は誰だ?わからない、でも懐かしい感じがする 『ほう奴らの人形か、暫く見ないと思っていたらこの星に来ていたのか まぁよい二人とも良く聞け 邪神が汝等の運命に介入し汝等の未来を狂わせている もしも汝が邪神と向き合い、戦う意志を持ったならば聖句を唱えよ! 聖句は今汝の心に刻み込んだ、この聖句が妾と妾の伴侶に聞こえた時必ず汝の力となることを約束する 人形、こやつをそれまで守ってやってくれ。こやつの精神は見ての通りくたびれておる こやつはこの10年間を何億と言う回数を繰り返しておる、普通の人間なら発狂してもおかしくない状態だ 妾たちがそちらの世界にいけるようになるまで頼んだぞ』 『……了解した』 あぁもう何がなんだかわからん、誰か説明してくれ 何で俺はここにいる、お前らは誰だ? 『落ち着け人間、そのうちわかる だが勇気を忘れるな!!』 勇気とか何だよ、俺に何をさせようってんだ! 『汝は何もしなくていい、ただ戦う意志を強く持て、それだけでいい』 何と戦えって言うんだ! 『ナ■■■■■■■■■、検閲かふむ……まぁいい、何度も言うが戦う意志を強く持て。また会おう人間!』 ちょっと待て!! 『あなた達は私が守る』 お前もだ、誰なんだお前は! 『……直ぐに思い出す……また図書館に……』 図書館?何のことだ、おい待ってくれ! 「……ョン!キョン!」 「ぅん……」 「ちょっとキョン!!」 「涼宮さん、彼も疲れているのですよ、もう少し寝かせて差し上げてはいかがですか?」 「仕方ないわね……、キョンも起きないし、今日はもう解散!あたしはキョンが起きるまで待つから皆は帰っていいわ」 「わかりましたではまた」 「それじゃ私着替えますね」 「……また明日……朝比奈みくるボソボソ」 「長門さん?わかりました」 「……コク」 「長門さん、僕も行ったほうが良いですか?」 「……コク……ただし彼と涼宮ハルヒには内密に」 -古泉サイド- さて、長門さんが僕たちだけを呼び出すなんて何事でしょうか 本来は彼の視点で勧めるべきところですが、彼はまだ就寝中です 午後6時僕と朝比奈さんはここ、長門さん宅に来て用件を聞いています 「本日午後3時21分48秒に彼の精神に二つの存在を確認 うち一つは午後3時34分6秒に情報連結を解除、正体は不明 残る一つは午後4時32分28秒に接触、何ものかの意思であると確認 情報統合思念体とも天蓋領域とも違う存在、但し有機生命体で言う女性に該当することが判明 彼女は私に言った 彼はこの10年邪神の力でループしている、回数は不明但し億を越えている 邪神が涼宮ハルヒの力を使い、運命の輪に閉じ込めている ループの記憶は消されているものの、彼の深層意識と精神は疲弊しきっている このまま行けば彼は自らの命を断つ可能性が高い 邪神の目的は恐らく彼の死を原因とする涼宮ハルヒの負の情報爆発 現在情報統合思念体に邪神の正体を問い合わせ中 情報統合思念体は未来人・超能力者と協力し彼の保全を最優先することを決めた あなたたちにも指示が行くと思う、しかし私という固体はあなたたちに友人として協力 を要請したいと思っている」 邪神ですか、それは神人とはまったくの別物なのですか? 「神人は涼宮ハルヒが生み出したエネルギー生命体、邪神は起源も規模も不明 今情報統合思念体から連絡があった、邪神の名は…エラー言語化できない、なぜ? 起源……エラー……規模……エラー……目的……エラー 機能検索……何者かが私に検閲プログラムを導入、解除不能 邪神に関する全てにプロテクトがかかっている、情報統合思念体に解除要請…… エラー、情報統合思念体にアクセスできない ただし、情報操作・私と言う固体の能力について制限は無い」 どういうことでしょう、邪神に関する項目のみに検閲、さらに情報統合思念体とアクセスができない となると、僕たちは推測に推測を重ね今後の対策を練らなければならないようですね 「い、今未来から私に指示が来ました。TFEI端末・超能力者と協力しキョンくんを死なせないようにという事です 長門さんと同じ、邪神については禁則がかかっています…… TPDDに制限がかかって、空間移動はできますが時間移動ができません…… あっ、ふえぇぇ、未来との通信もできなくなりましたぁ!」 困ったことになりましたね、まず整理しましょう 長門さんが得た情報、女性と思われる方によると 邪神が涼宮さんに情報爆発を起こさせ何かをさせようとしていること それと末端の僕たちを孤立させようとしていること、機関は大丈夫でしょうか 念のため確認してみましょうか もしもし、古泉です。はい……はい……わかりました どうやら機関とも連絡が取れなくなりました、本当に孤立させることが目的のようですね ではこうしましょう、これから毎日団活後長門さん宅に集合 各エージェントと情報交換し、情報をまとめましょう それでいいですか? 「……構わない、彼と涼宮ハルヒは私と言う固体にとって大切な人、危害を加えるものは 全て敵性と判断」 「わかりました、私もこの時間平面にいる駐在員と連携して情報を集めます!」 では今日の所は解散という事で -キョンサイド- うぅん…… 「あっ、やっと起きた、さぁ帰るわよ!」 ハル…ヒ?あれ? 「あんた泣いてるの?」 言われて気付いた、何で俺泣いてんだ? すまんハルヒ! そう言って俺はハルヒを抱きしめた 「ちょ、ちょっとキョン!……もう……」 すまん、しばらくこうさせてくれ どれくらい、そうしていたのかわからなかった それから俺はぽつぽつと語りだした なぁハルヒ、もし俺がいなくなったらどうする? 「そうねぇ、世界の果て、違うわね……そう宇宙の果てまでおっかけて連れ戻すわ あんたはSOS団の団員その1で雑用係だからね」 じゃあもし俺が死んだらどうする? 「バカなこと言わないで、今度そんなこと言ったら死刑!」 おい、それじゃ死ねと言ってるようなもんじゃないか 「そうよ、あんたはあたしの……なんでもない……」 そうかい、やれやれだな 「ところでキョン、そろそろ放してくれない?」 良く見たらハルヒは顔を真っ赤にして口を尖らせていた あぁすまん 「さっき寝ながら泣いてたけど、どんな夢見てたの?」 さぁな、よくは憶えてない、けど大切なもの全部無くして絶望に明け暮れていたような なんというかだな、そんな感じの夢だ それでなんだったかな、もう一度やり直したいって考えてたら 声が聞こえて、その後は憶えてないなぁ 「ふぅん」 最近良く見るんだよな、この夢 「何かの暗示かもね、あたしでよかったらいつでも相談に乗るわよ あっ、勘違いしないでよ、あたしは団長なんだから団員のメンタル面も把握する必要が あるだけだから!」 へいへい頼りにさせてもらいますよ、団長さん じゃあ、早速だが聞いてくれハルヒ 何でこんな事を思ったんだろう、俺は目の前にいるハルヒが無性に愛しく思えた いや、以前からわかっていたはずだ、ハルヒの気持ちも、俺自身の気持ちも この1年半という時間でどれだけ俺はハルヒと二人きりになれたのだろう よくこいつにはドキっとさせられることもあったっけ 文化祭の後なんかもそうだ、勝手にこれってデートか?と勘違いして古泉たちが来て落胆したっけ 今思えばこいつと二人きりで、こうやって話した時間って少なかったんじゃないか? でも今はこいつと、ハルヒと二人きりでいたい、いやもっと二人の時間が欲しい 俺らしくないが、こんな事考えてたら理性が欲に変わっちまった ハルヒが欲しいという欲にな だからこの日、俺はハルヒに自分の想いを全てぶつけた 「遅いのよ……バカ……あたしだって、あんたの事好きなんだから……」 こうして俺たちは彼氏彼女という関係になった まぁ周りからはやっとかと言う反応しか返ってこなかったがな 文芸部室に行くと、いつの間に準備されていたのか、俺とハルヒを祝福する会が開かれた ハルヒはというと、顔を真っ赤にしてそっぽ向いちまった 俺は俺で、気色悪いニヤケ面120%増で顔が近い古泉を適当にあしらいつつ、 笑顔120%増の朝比奈さんのお茶を啜る、長門はいつもと比べ少し笑顔な気がする 他にも鶴谷さん、国木田もこの会に出席してくれた 谷口もいたような気がするが気のせいとということにしておこう そしてメインの鍋パーティーだ、これもお馴染みになってきたな ん?今が何時かだって?2年の11月の始めだ そしてどっから情報を得たのか、俺とハルヒが付き合いだして二日後、新聞部の校内新聞号外により俺たちのことが報じられた ハルヒよこれもお前の無意識の仕業なのか? さらに弁当を忘れてきた俺は、仕方なく学食で飯を食うことにした、もちろんハルヒと一緒にな でここでも事件だ、新聞部に見つかっちまった…… 馴れ初めだとか、どっちが告白しただとか、根掘り葉掘り聞かれた ハルヒは紅茶をこぼすし、大変だったよこの日の昼飯はな この学校でハルヒを知らないものはまずいないほど有名だからな 全校生徒の興味を引いたんだろうさ 男子生徒の目が痛かった気もするが俺は気にしない さらに週明け、バカップルの日常と称して校内新聞に俺たちの記事が掲載された はぁ……まったくやれやれだ ん?週末は何をしたのかって?SOS団で不思議探索だ 勘違いするな、班分けでデートなどしていない この日班分けで当たったのは午前は古泉と午後は長門と朝比奈さんだ、ハルヒとは当たらなかった 何?もう一日はどうしたのかって?それは聞くな、いや聞かないでくれ頼むから…… ハルヒとのこんな日常がずっと続くんだなと、このとき何の疑いも持たなかった -古泉サイド- さて、彼には悪いですがここでまた僕にバトンタッチです 長門さんに呼ばれた次の日、僕は森さん、新川さんと会い情報交換をしました 現在のところ目新しい情報はありませんでしたが 機関との連絡は森さんを経由と、今まで通り動けという命令を受けました つまり、SOS団のメンバーと協力しろということでしょう 他の方たちは新しい情報は……現状ではあまり期待できませんね この日は至って平和でした、団活終了後長門さん宅に集合し現状報告・情報交換をしました 朝比奈さんは、未来との連絡も取れず時間移動不可の状態、駐在員のお偉方に禁則解除してもらおうとしましたが、ダメだったそうです なにせそのお偉方も同じ禁則を受けていたからです 長門さんも他のTFEI端末と接触したそうですが、全員同じ状況でした 全員と必要な情報を共有したそうで、何かわかったらすぐに僕たちに連絡するとのことです しかし驚きました、あの日僕たちが帰った後、彼と涼宮さんがお互いの想いを伝え合っていたとは これで僕のアルバイトも減るというものです なんにせよおめでとうございます、あなたたちの幸せは僕たちが守って差し上げますよ 「顔が近いんだよお前は!!」 んっふ、そんなに照れなくてもいいじゃないですかキョンさん 僕はただ祝福したいだけですよ、この話を聞いてすぐに準備しましたよ 彼と涼宮さんには指定時刻まで部室には来ないようにしていただき その間に彼の友人二人と鶴谷さんをお呼びし盛大に祝福させていただきました 涼宮さんは団長机で顔を真っ赤にしてましたね、キョンさんはいつもより少しニヤケてましたよ そして週末の団活ですが、午前中は彼と一緒になりました そこで彼にこんな相談をされました 毎日が既視感の連続であること、既視感の強さにより眠れない日があること 変な夢を良く見ること、内容までは覚えていないそうです なるほど、深層意識下にある彼の記憶ですね。これが彼のストレスとなって…… 僕はこう彼にアドバイスしました、あまり気にせずゆっくり休んだ方が良いと 午後の班分けで長門さんと一緒になる場合、僕からそのことを話しておく事を伝えました 結局、午後は僕と涼宮さんの組み合わせになりましたがね 団活終了後はもちろん集合しました この件を長門さんに伝え、今後どうするかを決めました 彼は彼で、朝比奈さんに心配をかけたくなかったのでしょう。 長門さんには相談しなかったようです なるべく彼にループしていることを悟られないようにすることで、一致しその日は解散となりました しかし週明けのあの校内新聞思い出しただけでも笑ってしまいます 馴れ初めや告白、イロイロ書かれていました 見事なほどバカップルでしたね、こんな彼らを守るそう決めた僕たちはこの後目立った情報も無く 邪神と呼ばれる謎の敵も動きを見せませんでした それから約1年が経過しました 2ヶ月ほど前からでしょうか、いえ夏休みの終わりごろからですね、彼の様子がおかしくなり始めたのは 自傷行為を起こすことが増え、精神的にも不安定になっていったのです 恐らく、以前話していた既視感が原因でしょう このままでは危険と思った僕は、彼を長門さん宅へ連れて行くことにしました 誘拐と言っても過言ではないくらいの勢いでね、もちろんご家族の了承は得ています ここで彼に全てを話しました、僕たちの置かれている状況、あなたが何度もこの10年間をループしていること 話し終えた後彼は少しずつ落ち着きを取り戻していました ただ、何故もっと早く教えてくれなかったんだと思っていることでしょう 落ち着きを取り戻した彼は、僕たちにもう自傷行為はしないと約束してくれました それなら涼宮さんに連絡をし、そう言ってあげて欲しいとお願いしました ですが彼は、今自分は涼宮さんに合わせる顔もかけるべき言葉もないと拒否しました この日の夜彼と涼宮さんがこの世界から消えました、正確には閉鎖空間へとシフトしてしまったのです 無事彼と涼宮さんは閉鎖空間から帰還しましたが、その後彼らは別れてしまった とこれはループの話しです さてそろそろ彼に語ってもらいましょうか、彼がどんな選択をし、どんな未来を勝ち取るのか -キョンサイド- 俺は今夢を見ている、それも毎晩毎晩同じ夢を、内容はこうだ 男のような女のような、それでいて全身黒いオーラのようなものを纏った奴に俺は追われている どこまでもどこまでも逃げる、逃げ続けた だがそいつは、俺がどれだけ逃げようと、気が付けば正面に立っている 追い詰められた俺は、こいつに腕を引きちぎられ、足を押しつぶされ 最後ははらわたを抉られ、頭を潰され、元の状態に戻されまた俺は逃げる これを何十回何百回と繰り返す事になる 最後は俺を襲う奴とは違う何かが目の前に現れ、光に包まれ目が覚める これが春先から見る俺の悪夢だ ハルヒと付き合いだして約1年が経過し、俺たちは3年に進級した 朝比奈さんは卒業後近くの私大に入学した、やはりハルヒ監視の任務がまだ続いているのだろう 3年になってからと言うもの俺は毎晩悪夢にうなされている さらに既視感も1年前と比べ日を追うごとに強烈になっていく 夏休みが終わり二学期の1週目から俺は学校に行かなくなった 夏休みの終わる頃には、もうこの悪夢と既視感に耐えられなくなり、寝ることさえ辛くなっていた そんな中2ヶ月が経過し11月になった、本来なら大学の受験勉強をしなければならない大事な時期だ SOS団のみんなはよくしてくれる、特にハルヒは毎日来てくれる 始めこそハルヒのノートを写すなどで勉強はしていたが、だんだんそれも億劫になっていく そしてこの2週間生きる気力を失い始めた俺は自傷行為を始めた そう自殺するためだ、未練はある、それでも現状から逃げ出せるのなら 行動に移そうとした時に限ってハルヒ達が俺の部屋に来た 「キョン!」 「何をやっているんですあなたは!!」 「キョンくん、ダメですよぉ!」 「長門さん、僕が押さえている間にナイフを取り上げてください!」 「……了解した……」 放せ古泉!頼む、頼むよ逝かせてくれ!! 渇いた音が響いた、俺の頬がじわじわと熱くなる 俺に平手打ちをした張本人であるハルヒが泣いている 「バカ!何やってんの! またあたしに、独りでいろって言うの! そりゃ、今は有希もみくるちゃんも古泉君もいるわ でもそれはキョン、あんたがいたからじゃない! あんたがいたから大切な友達を作れたの! だからあんたがいなきゃ、意味無いんだから!! ねぇ、あたしを……独りにしないでよ……キョン……」 そういうとハルヒは俺の部屋から出て行った ……ハルヒ…… 「キョンくん、涼宮さんを追いかけてください!」 朝比奈さん、今の俺にそんな資格ありませんよ 渇いた音が響き再び俺の頬が熱くなる、今度は朝比奈さんに叩かれたようだ 「私今のようなあなたを見たくないです! 涼宮さんを追いかけてください!」 …… 「どうして黙っているんです!どうして動いてくれないんです! どうしたら涼宮さんを追いかけてくれるんですか?」 ……朝比奈さんまで泣かないでください、今の俺には…… 「追いかけてください! 私の好きなキョンくんは、そんな意気地なしじゃないはずです 私の一番大好きな人は、こんな弱虫じゃない!!」 ……すみません朝比奈さん……でも俺は…… 「うぅ…ばかぁ!!」 朝比奈さんも俺の部屋から出て行ってしまった その直後電話が鳴り出した、どうやら古泉の電話のようだ 閉鎖空間か……すまん古泉…… 「はい古泉です、わかりました。 キョンさん、僕は少なからずあなたという人に嫉妬を覚えていました ですがそれも勘違いだったようです、失礼ですが僕はあなたを見損ないましたよ しかしそれでも、それでも僕はあなたが立ち直ってくれる事を信じています またあなたとオセロができることを、楽しみにしています。それでは」 古泉もいっちまったか… 長門すまん、一人にしてくれないか…… 「……落ち着いたら私の部屋に来て……話したいことがある キョン……生きて、ハルヒのためにも、あなた自身のためにも」 ……みんなすまん…… -ハルヒサイド- キョン……あんたどうしちゃったのよ 死ぬだなんて考えないでよ、あたしを独りにしないで もう独りはいやだよ、お願いだから生きて 気が付いたら公園にいた、公園のブランコであたしは泣き続けていた どれくらい時間が経ったのかわからないけど、あたりは暗くなっていた 誰かが近づいてくる、キョンなのかな…… そんな淡い期待は顔をあげた瞬間に裏切られた、けど嬉しかった、反面そこにキョンがいなかったことが悲しかった 有希、みくるちゃん、古泉君があたしを探してこの公園に来てくれた みくるちゃんも泣いていたのかな、目が赤いよ 「涼宮さん、キョンくんきっと立ち直ってくれます だから、キョンくんを支えてあげてください」 「僕からもお願いします、今の彼を支えられるのはあなただけです」 「……私からもお願いする」 私じゃ力になってあげられない、いつからこんな弱くなったのかな 「いいえ涼宮さん、あなただからこそ彼の力になってあげられるのです 僕たちでは、彼の心の奥底にある何かに触れることができません」 「そうなんです、私たちじゃ涼宮さんほどの力になってあげられません」 ダメよ、こんな弱い私じゃキョンの力になれない 渇いた音がして私の頬が熱くなった え? 「なんで、なんでキョンくんも涼宮さんもお互いを避けるんですか? 私の知ってる二人はとても優しくて、どんな困難も乗り越えられる強さも持ってるじゃないですか」 「そうです、あなたの彼の前でだけ見せるあの笑顔があれば、きっと彼も生きる気力を取り戻してくれるはずです」 「それは私たちにはできない、あなたの笑顔こそ彼の心の奥底にある恐怖を払う力になるはず、私はそう信じる」 「そうですよぅ、今のキョンくんも涼宮さんもお互いを必要としてるのに、逃げちゃだめです!」 うぅ……ごめん、ごめんねみんな。 そうよね、あたしがしっかりしなきゃ、あいつはもっと苦しいんだよね あたしと付き合いだしてから、ずっと変な感覚に苦しんできたんだもんね 悪夢もずっと見続けて、独り苦しんでるあいつを支えてあげなきゃ! そう決意できた時、あたしはまた泣いた、泣き続けた、涙が枯れるんじゃないかってくらいに そんなあたしを受け止めてくれた、ありがとうあたしの大切な友達 あたしもあいつと一緒に、あいつの苦しみと戦うんだ! だからあいつが元気になるまであたしは眠らない あたしをこれだけ悩ませたんだから、元気になったら罰金だからね! -キョンサイド- それから2週間こんな俺をハルヒは励ましてくれる、しかしどうにも生きる気力が沸かない ハルヒもまた眠っていないらしい、目の下にくまが出来ている バカ野郎…俺なんかのために綺麗な顔にくま作ってんじゃねぇよ…… 結局この2週間で俺が取った行動は、自傷行為を続けハルヒに叩かれる毎日を送ることだった 全部未遂に終わったがな、これもハルヒの俺に生きて欲しいという想いが起したのだろう 長門に話しがあるから部屋に来いと言われていたが、とてもそんな気分にはなれなかった 次の日の朝、古泉が所属する機関に俺は無理矢理連れ出された ほとんど誘拐だったな、親と妹には話をしていたらしく、何も言わなかった 着いた先は長門の家だ、マンションの入り口で長門、朝比奈さん、古泉が待っていた そこで俺は全てを聞かされた、俺の既視感の原因、そして俺だけが去年からの10年間ループしているのだという もっと早く教えて欲しかった、だが知ったところでどうしようもなかったのも事実だ このことを知れただけでも気が楽になり、自傷行為はやめることを約束した だがハルヒには合わす顔もなければかけてやる言葉も無いと、ハルヒへの連絡はしなかった 家に帰され久しぶりに寝れそうだと思い布団に入った 気が付くと閉鎖空間だ……、俺が原因で発生した閉鎖空間…… 北高か…… そう呟いた時赤い球が俺に近づいてきた、古泉だ 「やぁ、少しは眠れましたか?」 多分な 「既にお気づきの通り、ここは閉鎖空間です。2年前のあの空間と同じタイプのね」 そうかい 「僕たちからの応援の言葉です、邪神に負けないで自身を強くもってください、あなたなら必ず未来を勝ち取れます」 …… 「おっと時間のようです、あなたが未来を勝ち取りこちらの世界に回帰することを祈っていますよ」 …… 古泉が消えた、俺はどうすりゃいい…… しかたない……部室に行ってみるか ドアをノックする返事が無いがまぁいい開けよう 「キョン!」 ハルヒ……すまん……心配掛けた 「バカ!あたしがどれだけ心配したと思ってんのよ!バカバカバカバカバカ!」 ホント……すまん…… そういってハルヒを抱きしめてやろうと思った その時今までに無い強烈な既視感に襲われた 『そいつは本物じゃない、本物は後ろにいる 後ろだ後ろにいる者こそ本物だ!』 何かが俺に語りかけてきた、男の声だ、だが聞き覚えが無い それでも目の前のハルヒを受け入れてはいけない、そう思い後ろを見た 確かにハルヒがいた 「キョン!遅い!あたしを心配させておいてただじゃ済まないわ! そっちの奴を選んだら死刑だからね!!」 ハルヒが二人……さっきの声を信じるならこっちが本物か しかし……そういえば目の前のハルヒはくまが無い 後ろのハルヒにはくまがある、それにさっきまで泣いてたんだろう目が腫れてる…… それに後ろのハルヒには100万Wの笑顔があるじゃないか!! それと比べて目の前のこいつはなんだ、何をニヤニヤしてやがる気持ち悪い、100W、いや1Wのかけらもないただのニヤケ面だ そうだ、迷うこと無い後ろのハルヒこそ本物だ! なら目の前のこいつに言うべきことは一つ お前は誰だ? 「おや、とうとうばれてしまったようだね、さすが人間だ いつもの事だけど、人間の絆ってやつには驚かされるよ」 男と女が入り混じったような声でそういうと目の前のハルヒは、いや目の前の化け物は正体を現した 漆黒の化け物?そうかこいつが古泉が言ってた邪神か、なんでだろうな足がすくんで動けない 「その通り、さて邪魔が入ったし。まずは後ろの小娘から殺そうかな」 そうだこいつだ、俺の夢に出てきては俺を何度も何度も生かさず殺さずを繰り返してくれた奴は! 頼む、動いてくれ俺の足!! くそ動かない、ならせめてハルヒ伝えるんだ、あいつらがこの閉鎖空間に入ってこれるように祈ってくれと ハルヒ!! ハルヒ良く聞け、長門、朝比奈さん、古泉をこの世界にも来るよう考えてくれ 「え?キョン?どういうこと?」 SOS団が揃えば何だってできる!そうだろ? それが夢の世界ならなおさらだ! 「うん、わかった!(有希、みくるちゃん、古泉君来て!!)」 やばいハルヒ!!ぐ…あっ…、動けたと思ったらこれかよ…… 「おっと間違えた、小娘を殺すつもりが君を傷つけてしまったよ」 「キョン!」 ハルヒ俺の事はいい、今はあいつらをこの世界に呼ぶんだ!! 「でも!」 あいつらが来るまで俺は耐えてみせる!だからあいつらが来るよう祈ってくれ!! ハルヒ!!! 「……(みんな早く!!)」 「さて次は、肩を壊してやろうかね。やはり人間の悲鳴はいい、肩の次は背中を破壊してあげよう」 くそっ!まだかよ、このままじゃさすがに持たんぞ…… 「ふふふ、背中を潰すのは後にして足を破壊してあげるよ人間!!」 があああああああああああああ!! ここで俺は倒れちまったみたいだハルヒが泣きながら俺を抱きしめてくれてる ハルヒ…… 「キョン!キョン!!」 ハルヒ聞いてくれ、俺さバカだからお前を悲しませてばっかだったな 「ばか、いいわよ今はそんなこと!」 強く祈ってくれあいつらがここに来ることを!! 「うん、うん」 「さぁって次は内臓を抉ってあげよう どうだい、夢と同じ事をされる気分は まぁ本当なら腕を引きちぎってるところだけど、優しい僕は後にしてあげることにしたよ」 そうか、お前か俺にあの悪夢を見せたのは! 「そうさ、君の悲鳴は何度聞いてもいいものだ、これからがお楽しみだ!」 「ふんもっふ!」 ははっ、ホントにきやがったこれで俺たちの勝ちだ! 「すみません、遅くなりました」 「ふえぇぇぇ、キョンくん大丈夫ですか、涼宮さんも!」 「……私が彼の治療をするその間邪神を」 「みんな、本当に来てくれた、キョンの言った通りに、ありがとみんな!」 「さぁ一度退避しましょう」 「おや、逃げるのかい?まぁいいだろう、じゃあ12時間猶予をあげようその間に態勢を整えるといい 僕は高みの見物をさせてもらうよ」 保健室に逃げた俺は長門に治療してもらい、そのまま寝ちまったらしい それで変な夢を見た 「人間、おい人間!!」 またこの夢か…、どうせまた本が喋っているのだろう 「その通りだ人間、どうやら妾のこと憶えていたようだな どうだ汝はあの邪神と戦えるか?」 さぁな、さっきはハルヒを守るって一心でやっと動けたからな 本音言うと逃げたしたいよ…・・・ 「それは仕方ない、普通の人間であれば彼奴の瘴気で全員発狂してもおかしくない これも一重にあの小娘のおかげだろう」 なぁ俺はどうすればいい? 「それは汝が決めることだ、戦う意志があれば必ず勝てるとだけ言っておこう」 そうかい、まったくどいつもこいつも、俺には秘密主義なんだな 「そういうな人間、そうだ以前汝に刻んだ聖句、憶えているか?」 聖句?なんだそれ 「やはり憶えておらんか、まぁ戦う意志を持ったとき、汝の心に浮かび上がるだろう」 そんなもんでいいのか? 「うむ、なんの問題もない」 そうかいやれやれだなまったく 「さて、彼奴に気付かれるわけにはいかんのでコレで失礼するが 意志を強く持て、必ず勝てる。」 あぁありがとよ…… 「…ョン、キョン」 あぁハルヒか、どうした? 「もうすぐ、12時間たつわ、さっきの奴また来るのよね?」 多分な 戦う意志か、大丈夫なんだろうか、あれを目の当たりにして俺は戦えるのか? くそ、思い出しただけで震えがとまらない…… 「お目覚めですね、どうですか動けますか」 大丈夫だ……と思う 「あっ、キョンくん!よかった」 「……もうすぐ12時間……くる!」 「やぁ揃っているようだね」 うっ……体が震える……汗もとまらない 「ちょっとキョン、大丈夫」 「涼宮さん、彼と朝比奈さんを連れて下がってください。ここは僕と長門さんで食い止めます」 俺も戦うぞ古泉 「目の前の敵に怯えているようでは足手まといです、下がってください 朝比奈さん、二人がいう事を聞かないようなら、あなたの能力で移動してください」 勝手なことを言うな、俺のどこが怯えているっていうんだ 「自分でもわかっているはずです 先程からぶるぶる震えて、冷や汗を全身に掻いてるあなたに何ができるんです」 くっ…… 言い返せない、でもこのままじゃ俺は…… 「キョンくん、涼宮さん行きましょう 私たちがいては邪魔になるだけですから……」 わかりました…… 「有希、みくるちゃん、古泉君……わかったわ。さぁキョン行くわよ!」 すまん、長門、古泉 「……ここは私たちが相手になる」 「ふふふ、実はまだ君たちの相手をする準備ができていないんだ」 「どういうことでしょう?」 「直にわかるさ、その間こいつらの相手をしてもらおうか」 なんだよこの音……何かが大地を揺らし、なおかつ這いずるかのような音 「朝比奈さん、彼らを連れて今すぐ離れてください!」 「わ、わかりました!二人とも目を瞑って」 くそ、結局逃げることしか出来ないのかよ俺は!! 「わかったわ」 「いきます!」 この感覚……時間遡行か! 「もういいですよ」 朝比奈さん、あれからどれくらい経ちましたか? 「ここは閉鎖空間の旧校舎、あれからわずかな時間しか経過していません」 そうですか、古泉たちは? 「グラウンドにいます」 「みくるちゃんすごいじゃない! 何?一瞬で部室棟に移動したの? すごいわみくるちゃん!」 「一瞬でというより、わずかな時間遡行です」 「もしかしてみくるちゃん未来人?」 「ふふ、涼宮さんの夢ならなんでもありですからね」 「そういえばこれはあたしの夢だったわね」 こうしてみると、あの朝比奈さん(大)の面影が出てきてるな これから一気に成長するのだろうな朝比奈さんは 『いいのかい?仲間に戦わせて自分は何もしなくて』 誰だ! 『誰だっていいさ、この空間のわずかな綻びを見つけてね、ちょっとお邪魔させてもらったのさ』 空間の綻び?それはもうすぐこの空間がなくなるって事か? 『そうじゃない、さっき混沌が召喚した時に綻びができてね、それを利用させてもらったのさ それでジョン・スミス、君はどうしたいんだい?』 俺は戦いたい、あいつらだけに戦わせたくない 『じゃあ、勇気を持つことだ どんな恐怖にも負けない勇気をね そして共に詠おう、生命賛歌を』 勇気…… 『私の知り合いにね、後味が悪い、胸糞悪い たったそれだけで正義の味方になった人がいる 君にもあるはずだよ、君だけの正義、君だけの勇気、君だけの愛がね それじゃあ私はそろそろ行くよ、意識を侵入させるだけで精一杯だったからね』 待ってくれ、俺はどうしたらいいんだよ! 『君はもう答えを持っている、自分で答えたじゃないか 戦う意志があるなら後は勇気を持てばいい』 「キョン!」 え?あ、ハルヒ? 「何ボーっとしてんの、部室に行くわよ、ここにいても有希たちの邪魔になるわ」 ダメだハルヒ、俺は戦いたい! そう言い切りかけたとき渇いた音が聞こえた……またハルヒに叩かれたようだ……左の頬が熱く痛い 「今のあんたに何ができるってのよ!震えて、冷や汗掻いて……死にに行くようなモノじゃない! 夢の中であってもあんたに死なれたくない、少しはあたしの気持ちもわかってよ!バカキョン!!」 ……くそ、俺はまだ震えてんのか、この期に及んでまだ…… 爆発音が響き古泉と長門が化け物の攻撃で、俺達のところに飛ばされてきた 古泉!長門!! 「すみません、油断しました。まさかあのような化け物が出てくるとは」 「……私達の戦闘能力だけでは抑え切れなかった……」 「さすがの情報統合思念体対ヒューマノイドインターフェイスも、ダゴンとヒュドラの群れには適わないようだね」 ダゴン?ヒュドラ?なんだそりゃ 「クトゥルーに仕える深きものどもの首領さ、どうだいすごいだろ」 「多勢に無勢です、このままでは」 「さぁよく頑張ったね、しかし人形と能力者一人じゃもう限界だろ? 僕は僕の目的を果たさせてもらうよ」 「え、うっ…あぁ…キョン!なにこれ……頭が痛い……あぁぅっ!……しゃい……にんぐ……とらぺぞ……へどろん…… なにこれ、何なのよいや、こんなのいやいやいやいや 何なのよこれ、こんな世界見たくない、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁ!!!!」 ハルヒ!落ち着けハルヒ!ダメだ、完全に取り乱してる なんだ、ハルヒに何しやがった、くそこの期に及んでまた足が震えやがる、動けよ俺の足!! 「少し面白い物を見せてあげてるのさ、僕たち邪神の住まう宇宙をね おっと、能力者に人形さん、君たちも動かないでもらおう」 「これは!?動けない!」 「ふえぇぇぇぇ!」 「……私たちの周囲に重力結界が発生、解除不可」 長門、朝比奈さん、古泉! 「勇気を、恐怖に立ち向かう勇気を持ってください」 「キョンくんだけが頼りです」 「……あなたならできる」 「そろそろ出現かな、あぁ出てきた出てきた」 くそ、なんだあれ…、金の箱?違う黒い、結晶体?なんだアレ、形が変わり始めた、なんなんだあれ! 「輝くトラペゾヘドロン、僕はね、あれを破壊したいんだよ。 この娘の力を使えば世界をまるごと改変できるけど それじゃあ面白くない、どうせならこいつを破壊する瞬間を連中に見せてやりたいからね さてそろそろ神人とやらにもご登場願おうか おそらく彼女が出した巨人ならあれに封じられることは無いだろうね」 てめぇ!! 「…………」 ハルヒ、ダメだ意識を失ってる くそっ、くそっ、俺には何にもできないのかよ、震えて黙って見てるしか出来ないのか俺は 今動けるのは俺だけなんだぞ、しっかりしろ!今動かないと絶対後悔するぞ 失わなくて済むモノを失うんだぞ、戦うんだよ俺!そうだ足を動かせ、拳を握り構えろ! うおぉぉぉぉぉ! 黒い化け物に一発、また一発、俺は何度も殴り付けた 「ふふふ、痛いじゃないか、震える体でよく頑張ったね人間。そんなに死にたいのかい?なら望みどおり君から殺してあげるよ!」 うるさい黙れ、死んでたまるか、俺はこいつらと生きるんだ! 生きて現実空間に戻るんだよ!! そう叫んだとき全身が光輝いた、後ろを見ると長門たちの動きを封じていた結界が消滅していた ハルヒはまだ気を失っている、でもさっきより楽になったみたいだよかった そういえば、夢で聖句がどうの言ってたな、なんだったかな 「あれは連中の……そうか、また彼らを愛せるんだね……ふふふ、さぁ人間早く早く、早く喚んでくれたまえ あぁ、楽しみだ楽しみだよ」 なんだこいつ……いや今は聖句だ……なんだったっけ……確か……確か…… 『さぁ人間、唱えよ!未来への路を開く無垢なる翼を汝の手でつかみとれ!!』 ……思い出した!! 「うぅん、キョン?」 ハルヒ、目覚めたかもう少しゆっくりしてろ 「うん……」 憎悪の空よりきたりて!! 正しき怒りを胸に、我らは魔を断つ剣を執る! 汝、無垢なる刃デモンベイン!! ……なんだよ、何も起こらないじゃないか、くそ! 「キョンさん、涼宮さんと一緒に聖句を唱えてはどうでしょう、もしかするとそういうものなのかもしれません」 そういうもんなのか? 「まぁこういのはお約束ってことで」 そうだな、だが顔が近いぞ古泉 ハルヒ、すまんが今のを一緒に頼む 「さっきのアレをするの?」 頼む! 「仕方ないわね、いい?一回だけだからね?」 それで十分だ!じゃあ行くぞ! 憎悪の空より来たりて 「正しき怒りを胸に」 「「我らは魔を断つ剣を執る!汝、無垢なる刃デモンベイン!!」」 唱えた瞬間、急に俺とハルヒの体が光り出した そして目の前に五望星が描かれ一際眩い光が放たれたと思ったらそこに誰かが立っていた 「人間、よく戦う勇気を持ち決意をした、後は我らに任せるがよい」 この声、夢に出てきた 「アル!」 「応!!」 「……ふふふ、あははははは、待っていたよ旧神・大十字九郎!!そしてアル・アジフ!!」 「久しぶりだな、ナイアルラトホテップ! 何度目かは忘れちまったが、あんたの企みこれまでだ! それにしてもまだ諦めてなかったんだな、輝くトラペゾへドロンの破壊をよ」 「久しぶりだね大十字九郎、僕が諦めるわけないだろう。 今度は輝くトラペゾヘドロンの衝突による破壊ではなく 人間の力で破壊しようと思ったのさ、まぁ成功する確率は低いけどね さて、もう少し僕の相手をしてもらうよ大十字九郎、6体の人形と遊んでいてもらおう」 「させるかよ、クトゥグア!イタクァ!!」 何だあれ、何もないところから火?氷?いや違う、拳銃だ 「……魔術」 魔術だぁ? 「ちょっとキョン!なんなのアレ!」 わからん、俺が聞きたい。それと、お前はまだ不思議を諦めてなかったのか 「当たり前じゃない!」 あぁわかったわかった、じゃあまた皆で不思議探索しようぜ。 「そうね!」 で、長門よ魔術ってなんだ?手品師みたいなもんか? 「違う、魔術とは魔導書と契約することで己の力とするもの 高位の魔導書になれば、意志を持ち、神を召喚することが可能」 神?この空間に出るアレみたいなもんか? 「違う、恐らくは最高峰の魔術で編み上げる巨神……!? 邪神に関する項目のプロテクトが解除された、原因は不明」 「私もです、邪神に関する禁則が解除されました、TPDDも正常に作動してます」 やれやれどうなってんだ、今回は 「あはは、あんたのその顔久しぶりに見たわ」 そうか? 「うん!」 そうかい 「まったくせっかちだねぇ君たちは、今出したばかりだってのにもう殺しちゃったのか まっ君たち相手に足止めになるとは思ってなかったけどね では能力者と人形の相手はこいつらにやってもらおうか」 今度は何だ……、おおおおおいなんだこいつら、半魚人か 「さぁ邪神の眷属よ、君たちの欲望を人間たちで満たして来るんだ」 『シャアアアアアアア!!』 「させるか!うおおおおおおおお!!」 ……俺は、いや俺たちは息を飲むしかできなかった 恐ろしいまでのスピードで邪神の眷属と言われた半魚人たちを全て倒してしまったからだ 正直何が起こったのかさっぱりわからん…… 「これを持ってここから離れろ!」 これは? 「それは妾のロイガーとツァールを模して作った小剣、そしてこれがバルザイの堰月刀だ 見たところ、小娘二人と汝は武器も無ければ特殊な攻撃能力を持っているわけでもない 人間、それを持ってこの場から離れよ!」 なるほど、自分の身は自分で守れって事か ってあんたたちはどうするんだ? 「ナイアルラトホテップを倒す、あっちの建物の一部に防護結界を張っておく そこに入ったら何があっても出るんじゃない」 わかりました…… 「人間、その小娘大切にするのだぞ。妾たちは彼奴を倒す、その後すぐに汝等を元の空間に戻してやる」 「お互い、苦労しそうな奴に惚れちまったが、頑張れよ」 あぁ、ハイ…… 「さて九郎、さっさと終わらせよう!」 「そうだな 憎悪の空より来たりて」 過去幾億回と繰り返された聖句を高らかに詠みあげる 「正しき怒りを胸に!」 正しき怒りに応え、全ての悪に等しく滅びを与える 「「我らは魔を断つ剣を執る!!汝、無垢なる刃!!」」 最弱にして無敵の剣、汝の名は 「「デモンベイン!!」」 爆ぜる光、闇を照らす聖なる光 五芒星が覇道を往く者の紋章が、灰色の世界に光と色を与える 今度は外が明るくなったなって、なんだありゃ!! 「……鬼械神、機械仕掛けの神、全ての悪を打ち滅ぼす神像、デモンベイン」 え?なんだって? 「で、デモンベインです」 朝比奈さんまで…なんですか、そのデモンベインって 「……説明はあと、あなたは涼宮ハルヒを守るべき 彼らの防護結界は部室に張られている、今は一刻も早く部室に行くべき 私の力ではこれから起こるであろう事象に対処できない」 そうだな そしてまたもや世界が揺れる、それも一度に6箇所で ハルヒ立てるか?ここは危険だ、部室に行くぞ 「わかったわ」 ここは危ないさっさと部室に行こう 防護結界とやらを張ってくれているなら一番安全だ 「それでは僕が追っ手を抑えます 先頭は長門さん、左右にはあなたと朝比奈さん、中央に涼宮さんです」 わかった、朝比奈さんにはこの小剣の片方を渡しておきます そういえば朝比奈さんは武器を持ってないんですか? 「武器の携行は禁止されてますから…… そ、それじゃこの小剣お借りしますね」 ハルヒお前もこれを持っておけ、俺たちだけで対処しきれない時は自分で自分の身を守るんだ 「あんたがあたしを守りなさい、団長命令よ!」 わかったよ、じゃあ部室に急ごう しっかし多いなぁこの半魚人どもは 「後ろもかなりの数です、しかし通常の閉鎖空間と比べ僕の力はかなり上がっています ですから僕に任せてください」 前方は長門が朝倉と同じ攻撃方法で撃退してくれてるが、如何せん数が多すぎる 「……問題ない、しかし0.1%ほど撃ち漏らしている、あなたと朝比奈みくるはそれを撃退して」 分かった バルザイの堰月刀ね、……どうせなら 虎王斬神陸甲剣!! 『グギャアアアアアア』 すげぇ、なんて切れ味だ……しかしグロいな…… 「おやおや、ノリノリですね」 黙れ古泉 「ふえええええ、こっちに来ないでくださぁい!」 朝比奈さんに渡したロイガーの刀身から風刃が巻き起こり、ばったばったと細切れにされていく あの人たちはなんつう危険なもんを…… 「見ろ九郎、ロイガーを持った小娘を、あ奴魔術の才があるぞ」 「そうみたいだな、というかアル」 「なんだ?」 「ロイガーってあんな使い方もできたのか?」 「……まったく汝と言う男は……ロイガーの属性を考えれば当然だ、無論非公式だがな!」 「非公式って……そんなメタ発言して、怒られるだろいろんな所から!」 「問題ない、所詮この作者の妄想だ。」 「いや、そりゃそうだが……」 「それよりも九郎、雑魚共が動き出したぞ!一気に片付けろ!」 「応!!クトゥグア!イタクァ!神獣形態!!」 「さすが大十字九郎だ、ダゴン程度じゃ足止めにもならないか じゃあ次はデウスマキナが相手だ」 なんだ今のは! 「……旧支配者であるクトゥグアとイタクァ」 それってさっきの銃じゃなかったのか? 「……銃は力を制御するための器に過ぎない、今のが真の力」 「しかし本当にすごいですね、大十字九郎さんにアル・アジフさんと言いましたか 僕たちが苦戦したあの化け物を瞬殺とは、恐れ入ります」 「アルアジフ?それってネクロノミコン、オリジナルの名前じゃない!!」 なんだそのネクロノミコンって 「西暦730年ダマスカスにて、狂人アブドゥルアルハザードが書いた魔導書です キョンくん、今後も涼宮さんと一緒にいるなら、これくらい憶えておいた方がいいですよ」 そうですね、って待てよさっきの少女がその魔導書とか言わないよな?さすがに 「それはありえません、いくら強力な魔導書といえど人の姿をするなどとは思えません」 「彼女は間違いなく魔導書アル・アジフ、力ある魔導書は魂を持ち姿を変え、神の模造品を召喚できる」 じゃあ、あのロボットが神の模造品っていうのか? 「あれは神の模造品の模造品、人間のための鬼械神(デウスマキナ)、それがデモンベイン」 さっぱりわからん…… 「あんたの頭じゃ考えるだけ無駄よ」 そうだな、……って遠まわしに馬鹿って言うな 「団長様に心配ばかりかける団員は、バカで十分よバカキョン!」 へいへい、さてこっちも粗方片付いたし、ようやく部室に着いたな 「部室棟に入ってからは、あの半魚人の数も減りましたからね」 それじゃ一息入れますか 「あっ、じゃあお茶煎れますね」 ありがとうございます」 ……しかし、緊張感のかけらもないな…… 「まったく、困ったものです」 顔が近い、よるな気色悪い 「九郎、このままでは埒があかない!アレで往くぞ!」 「応!断鎖術式壱号ティマイオス!弐号クリティアス!!」 「ふぇ!何ですか?何でこんなに時空が!」 「……現在戦闘中のデモンベイン脚部シールドから時空間歪曲を観測 そして元に戻ろうとする時空間の反発力で機動力を得る さらにそのエネルギーをぶつけることで凄まじい破壊力を生み出す」 「アトランティス!」 「「ストライィィク!」」 すっげぇ、延びてきた腕かわしながら、頭上に踵落しを食らわせてさらに銃弾ぶち込んでやがる 「残り5体」 おっ、今度は刀持った奴だ 上とか横からの攻撃をかわしながらよくやるなぁ…… って何だあいつ、脇から腕だしやがった!隠し腕ってやつだな 「光射す世界に汝等暗黒凄まう場所なし! 渇かず飢えず無に還れ!! レムリア!インパクトォォォ!!」 「昇華!!」 「……無限熱量による近接昇華、あれを食らえば一溜まりも無い、後4体」 すっげぇ…… 上からの攻撃に加え、金ピカおきあがりこぼしのレーザーに、黒い弾を撃ってきてる奴か こいつは厄介だな おっと黒い弾の流れ弾…… おいおい、何の冗談だ、人の顔が窓に映ってるぞ 「キョン!幽霊よ幽霊!早くカメラを持ってきなさい、心霊写真として雑誌に投稿するわよ!」 ハルヒ、あれだけは止めとけ、いやホラ何か声みたいなのも聞こえるし 「何言ってるの、こんなチャンス滅多に無いわよ、早くカメラ持ってきなさい!」 あぁハルヒ 「何よ」 言いにくいのだが 「だから何よ」 消えちまったみたいだぞ幽霊 「あぁぁ!もうこのバカキョン!せっかくの不思議だったのにもったいない……」 夢の中なんだし、撮っても仕方ないだろ、第一どうやって現実の世界に持っていくんだ 「それもそうね、夢なら仕方ないか……夢ならね」 何か言ったか? 「別に!」 とこんな問答を繰り返してる間にも外では戦闘が続いていた 「ニトクリスの鏡!」 今度は分身か? 「違う、鏡を使った魔術、現実と虚構の境界をなくし、幻を見せている」 でも長門、何かその幻、鏡みたいに割れてるぞ 「……そう」 「クトゥグア!イタクァ神獣形態!」 至近距離でそれを撃って大丈夫なのかあのロボット 「……直ぐに離れているから問題ない」 みたいだな…… 「本当にすごいですね、見てください」 おぉ、あの二匹地上にいるもう一体の奴を襲ってやがる 「地上の敵は終わったみたいですね」 しかし、空中の敵はどうするんだ? 「シャンタク!」 今度は翼か……なんでもありだなこのロボット…… 緑の方はすばしっこいなぁ、どうやって倒すんだ? おっ、あれはリボルバーだなあれでどうする気だ どこ狙ってるんだ、全然ちが「マッガーレ」 ……気のせいだ気のせいにしておこう 「気のせいではありませんね、残念ながら 弾道が確かに曲がりました」 お前の仕業か古泉 「いいえ、どうやらあれは自動追尾弾のようです 的確に動力部を貫いたようですよ」 とどめはさっきの無限熱量ってやつか 残りはあのデカ物だな 「すごいですねぇ、自動拳銃とリボルバーが融合して長距離砲になりましたよ」 あれで撃ち貫くってわけか 「そのようですね、っ!撃ちましたよ」 一撃かよ…… とまぁこんな感じでこの戦いを見ていたわけだが ほんと、俺の日常ってどこにいったんだろうねぇ誰か教えてくれ 「さぁナイアルラトホテップ、後はあんただけだぜ」 「まったくさすがだよ君たちは、仕方ないここは退こうか」 「この空間から簡単に逃げられると思うな、邪神よ」 「そうだね、ならまずは君たちから死んでもらうよ!」 「荒らぶる螺旋に刻まれた」 「神々の原罪の果ての地で」 「「我らは今聖約を果たす」」 「「その切実なる命の叫びを胸に」」 「「祝福の花に誓って」」 「「我は世界を紡ぐ者也」」 デモンベイン最強にして最凶の必滅奥義 第零封神昇華呪法 輝くトラペゾヘドロン おいおい、あっちの奴あそこにある奴と同じもん出しやがったぞ 「……デモンベインが握るモノが本物、恐らくナイアルラトホテップの封印と同時に消滅する」 「大十字九郎ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」 「大人しく眠ってな、永遠にな」 「紛い物のトラペゾヘドロンも消えた、今回も終わったな九郎」 「あぁ、さてアル、さっき現実空間に戻してやるとか言ってたがどうすんだ?」 「ふむ……」 「あっ、お前何も考えてないな!そうだろう!」 「これも運命だ諦めよ」 「またそれか!」 「さてな」 なんか、痴話喧嘩みたいなのが聞こえるなぁ 「……オワタ\(^o^)/」 どうした長門? 「……なんでもない」 「お疲れ様ですキョンくん」 あぁ、ありがとうございます 「さてここから出る方法ですが」 ……っゴホン! 「そ、それよりもキョン、説明してくれるんでしょうね!」 な、なんのことだ? 「有希たちの事、あたしに隠れて何をしてたのか、きっちり話してもらうわよ!」 お、おい古泉 「しかし、綺麗ですねデモンベインは」 朝比奈さん? 「ホントですね」 長門! 「……」 ……しっかし、綺麗だなあのデウスマキナってやつは 「そうね、それよりキョンあたしを待たせた罪で罰金だからね! それと今回のことと有希たちのこと、その時にたっぷり説明してもらうから、覚えてなさいよ!!」 ……えぇい、仕方ない!罰金はとりあえずこれでカンベンしといてくれ 「え?んん!」 ハルヒ、また学校でな…… こうして俺は自室で目が醒めた、気分のいい夢だった、夢ではないんだけどそういう事にしておこう さて、ハルヒがこれを夢と認識してくれればいいんだが…… ん?メールか from古泉 お帰りなさい、先の閉鎖空間で涼宮さんの力は失われました それと同時に僕の力もなくなりました これで僕はなんのしがらみなく、あなたたちと付き合えます 僕たちの事は、あなたから涼宮さんに話してあげてください 涼宮さんが力を失った以上、隠す必要もありませんからね 今までありがとうございました、そしてこれからもよろしくお願いします しかし、ようやくあの閉鎖空間から回帰できた理由がわかりました こういうことだったんですね ではまた部室で To古泉 うるさい、黙れ、営業スマイル面を写メで送ってくるな気持ち悪い オセロでボコボコにしてやるからおぼえとけ ……いろいろ迷惑かけたなありがとよ from朝比奈さん キョンくん、お帰りなさい、時空の歪みも消えて未来が固定され、涼宮さんの力もなくなりました これで私の任務も終わりです 大学卒業までこの時間平面に居ていいと許可がおりました 卒業後お別れになっちゃいますけど、それまでよろしくね そういえば、あれが閉鎖空間から帰ってくる方法だったんですね 眠るお姫様を起こすためのキスだなんて、まるで白雪姫ですね! 涼宮さんと幸せになってくださいね To朝比奈さん そうですか、とうとう帰ってしまうんですね。 また部室にも顔を出してください朝比奈さんなら大歓迎です あの時の朝比奈さんのビンタ効きましたよ、ありがとうございました from長門 お帰りなさい 涼宮ハルヒの能力は完全に消失した 情報統合思念体は私に蓄積するエラーこそ自律進化の可能性と認識した。 情報統合思念体はあなた達に感謝している 私という固体もあなたに感謝している 情報統合思念体は私の能力にプロテクトをかける事と、私に蓄積するエラー情報の提供を条件に、この世界で生きていいと言っていた。 また図書館に To長門 そうか良かったな長門、それから今までありがとな また図書館に行こうな さてまだ時間も早いし、もう一回寝るか 今日は月曜、学校に行くのにハルヒとセットでくまなんか作ってたら、谷口あたりに何言われるかわからんからな そしてまたこんな夢をみた、あの閉鎖空間で俺たちを助けてくれた二人組みの夢だ 「よく頑張ったな人間、人間でここまで邪神に立ち向かったのは九郎以外で汝が初めてだ ロイガー・ツァール・バルザイの堰月刀は返してもらうぞ」 「急にあの空間が消え始めた時は焦ったな」 「確かにな、汝一体結界内で何をしたのだ? まぁ、またあ奴が現れたら遠慮なく聖句を唱えよ」 「俺とアルとデモンベインがすぐに駆けつけるぜ」 「あの小娘の力は妾達で消しておいたからその心配はないと思うがな では九郎往くとしようか」 「あぁそうだな。それよりアル、子供が欲しいと思わないか?」 「無茶を言うな、妾達は戦いの日々を送らねばならんのだ それに妾は魔導書だ子供ができるかどうかもわからぬ 仮に子供が出来ても、戦いで汚れた妾達の手では……」 「そうだな……、まぁそん時は姫さんにでも頼んでみるか」 「また覇道の小娘に頼るのか汝は!」 「頼れるのは姫さんとライカさんくらいだからな」 「まぁ、出来た時はそうするしかないが、なるべくは作らないようにするからな九郎」 「あぁわかってるよ」 (と言うより、あんなもので毎日毎日……) 「どうしたアル?顔が赤いぞ」 「うつけ!」 「いつまでも長居してないで往くとするか、じゃあなジョン・スミス、幸せにな」 「さらばだ人間」 まったくこの人たちは……俺の夢に何度も入ってきては、最後に夫婦喧嘩までしていくなんて…… もういないかもしれませんが、ありがとうございました ん?そういえばあの時語りかけてきた奴も、この大十字さんも何でジョンスミスを知っているんだ? こうしてデモンベインと呼ばれていたロボットの手に乗り彼らは去っていった 彼らが離れていくにつれ、俺はいつかハルヒに話そうとした幸せの青い鳥の話を思い出していた 「キョン!キョン!!起きろ!!!」 ん?なんだハルヒか…は?ハルヒ? 「学校行くでしょ?」 あぁ、それよりなんでお前がいるんだ! 「別にいいじゃない」 2ヶ月と1週間ぶりってとこか、それよりハルヒ着替えるから部屋から出てくれんか 「あっ…そ、そうねじゃあリビングで待たせてもらうから、さっさと着替えてくること」 わかったわかった 「すまん、待たせたな」 「いいわよ、それよりあの灰色空間のこと説明してもらえるんでしょうね?」 「わかったよ、いいか・・・」 とまぁハルヒに閉鎖空間のこと、長門や朝比奈さん、古泉のことを教えてやった まぁさすがにアレを目の当たりにすれば、さしものハルヒも信じるしかなかったようだ ハルヒの能力については、ハルヒの機嫌が悪くなったりすると閉鎖空間が発生する程度しか言わなかった これ以上喋ってまた能力を発現されても困るからな ジョン・スミスについて話したのかって?それはまたもう少し後の話しだ さて今日から学校に復帰するわけだが、授業も遅れてるし、出席日数も危うい せめてハルヒと同じ大学に入れるよう勉強しないとな、……そうだな、ハルヒに勉強見てもらうか こうして俺は学校に復帰した 試験結果はハルヒ教諭のおかげでそれなりの結果だった だが出席日数が僅かに足りず、3月に補習を受けることで何とか卒業することが出来た SOS団全員で同じ大学に合格し、朝比奈さんが未来に帰るまでの間遊びと学業を共にした。 朝比奈さんが大学を卒業する頃にはもうあの朝比奈さん(大)になっていた 未来に帰ってしばらくしたら、高校生の俺に会うのだろう、白雪姫と星型の黒子を伝えに 俺はと言うと4年の春に就職もきまり、あとは卒業に向けて遊ぶくらいしかやることがなくなっていた せっかくなので暫くアルバイトをすることにした なんのためかって?そりゃ決まってるハルヒとの結婚資金を少しでも稼ぐためだ 今日はSOS団の団活の日だ、朝比奈さんはこれないが、俺たち4人で結構楽しくやっている 長門と古泉はいつのまにか付き合いだしていた そうそう、あの事件結局なんだったのかと言うと 邪神ナイアルラトホテップが仕組んだことだったらしい 何をしたかったのかというと、既に失われた輝くトラペゾヘドロンをハルヒの力で創造し それを破壊することで、アザトースの庭とやらを解放するのが目的だとか 解放したらどうなるのかきいたが長門は答えてくれなかった 知らない方がいいらしい、そうだな知らない方がいいかもしれん 旧神とやらは何だったのかと言うと、邪神ナイアルラトホテップを追っていたらしい あらかじめどこに出現するか分かっていたが、彼らの力だけでは閉鎖空間に入れなかったのだと だから俺とハルヒで聖句を唱えることであの場に顕現できたというのだ さすがはハルヒだ、神様と崇められていただけの事はある 邪神はどうやって入り込んだかと言うと、俺にくっついて入ったらしい でもあの時、俺がハルヒにあいつら呼ぶよう言わなかったら確実に死んでたな俺 もしハルヒが情報爆発を起こしていたら、どうなってたんだろうなこの世界 本物のハルヒが居る場所を教えてくれたあの声に感謝だ でもあの声旧神て呼ばれてた人に声が似てたな できればもう一度会って話しがしたいものだ そういえば、さっきから奥の席が騒がしいがなんだろうか そこにはどこかで見たことのある二人がいた こっちに気付くと、男の方が俺たちのところに来た 「よっ、元気そうじゃねぇか、まっこれからも頑張れよ!」 「九郎、もう行くぞ!」 少女に引っ張られて男は去っていった、あぁそうか彼が大十字九郎さんか あの時はありがとうございました、大十字さん! 聞こえたらしく、手を振っていた 「知り合い?」 とハルヒが聞いてきたので 高校の時世話になった人だと返した 「そう、ならいいのよ。今度会ったらあたしもお礼言わないと」 だがこの後彼らと会うことは無かった 当然だ邪神とやらと戦う彼らに安息の日々は無いのだから さて今日の班分けはっと… 俺とハルヒは色つき、古泉と長門は色無し なぁこの組み合わせなら、Wデートでいいんじゃないか? 「いいですねぇ、僕は賛成ですよ」 「……異議なし」 「古泉君と有希がいいならそれでいいわよ!」 もしもあの時選択を誤っていたら、俺は今頃あの頃に戻りたいと願っていたかもしれない でもあいつの笑顔があれば、あの頃に戻りたいなんて思わない そう、ハルヒの太陽のような笑顔があれば他には何もいらないのさ -Fin- -古泉サイド- と、彼が締めてしまいましたが僕の方でまた少しだけ続けさせてもらいます あの時は驚きました 突然機関の皆さんがいる前で閉鎖空間の入り口が現れたのですから 他の能力者はまったく気付いていない様子でした その時発生していた閉鎖空間と同じ境界でその入り口があったのです もしかしたらと思って、それに触れるとなんなく入れました 僕だけが入れるのでしょうねあの入り口は 入ったら入ったでまた大変でした、能力を使って学校まで行き、そこで長門さん、朝比奈さんと合流しました 一番驚いたのは朝比奈さんです、どうやってきたのかとたずねたら 突然頭にここの空間座標が送られてきたそうで、TPDDを使い侵入したそうです 長門さんもほぼ同様でした 異常事態でしたね、僕だけじゃなく長門さん、朝比奈さんまでこの空間にいるのだから 部室に行くとそこには漆黒の闇を纏ったようなそんな感じの化け物がキョンさんを襲っていました 僕は急ぎ光の球を作りだし化け物に投げつけました 正直驚きました、いつもの20倍の威力でしたからね、それでもこの化け物には通用しなかったのですが…… 化け物が時間をくれるそうなので、一旦保健室に退避して長門さんに彼の治療をしてもらいました 涼宮さんも疲れていたのでしょうね、彼の治療が終わるとすぐに眠ってしまいました 僕たちは外で彼らを起こさないよう対策会議を始めましたが、結局いい案が浮かびませんでした しかしここで、長門さんが以前彼の精神に入ったときにあった女性が、彼に聖句を教えたことを聞かされました この聖句が勝利の鍵であることを確信した我々は彼らを守ることに専念することにしました 結果は重力結界やダゴンと呼ばれた化け物のおかげでさんざんでしたけども 後は皆さん知っての通りです そういえば、あの時部室に直接時空移動すればよかったんですが 残念ながら彼らが張ってくれた結界の影響で、移動できなかったと朝比奈さんが言ってましたね 僕は卒業と同時に長門さんに僕の想いを伝えました ですがこのときは振られましたねやっぱり 長門さんがキョンさんを好きだという事は知っていましたから でも大学2年の時ですか、長門さんから僕にアプローチがありまして そこでようやく僕と長門さんは恋人同士になったわけです 涼宮さんが好きじゃなかったのかって? 確かにそうですが、僕にとって彼女は高嶺の花ですよ あの太陽のような笑顔は僕ではなく、彼に向けられているのですから え?それではどうして長門さんを好きになったのかって?んっふ、禁則事項です そして大学4年になってキョンさんの就職が決定して少ししてから 何かいいバイトが無いかと相談を持ちかけられまして ちょうど機関で人手が足りないからどうか?と答えました 機関は彼に特別恩がありますからね、さて大学卒業後の七夕の日にサプライズを用意しておきましょう これは僕たち機関に所属するもの全員からのお礼ですからね クリスマスに僕たち機関からのクリスマスプレゼントとして、彼らに教えてあげましょう。今からならたっぷり準備期間もありますし 彼は彼でこの七夕にプロポーズするそうです、何でもその時にジョンスミスの話しもするそうですよ んっふ準備のし甲斐がありますよ 実は僕は僕でもう長門さんにプロポーズをしてしまいまして、もちろん答えはYESでしたよ W結婚式なんて涼宮さんがきいたらどんな反応するんでしょうか 実に楽しみです、あぁもちろん長門さんもこの計画知ってますよ。さてこのくらいにしておきましょうか それでは皆さんにも幸せが訪れますように そして僕からの忠告です、あの頃に戻りたいなどと考え邪神に惑わされないでください その邪神はいつどこであなたを狙っているかわかりませんからね それに、未来は悪いことばかりではありません、自分自身でどうにでもなるのです もちろん、どうにもならない事もあります。ですが、そこから自分でどう修正するかで、また未来は大きく変わるのです -TheEnd-
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終章 回復 土曜日の十時。 あたしたちSOS団の待ち合わせ時刻。 横には今聞いた言葉の衝撃に固まる古泉君にみくるちゃんに有希。 あたしも固まっている。 目の前にはキョンとこの間の女の人。 楽しそうにニヤニヤしながら二人がこっちを見ているが、 あたしは頭の整理が追いつかない。 今、なんて言ったの?この人。 それはつまり―― その日あたしは時間ギリギリに駅に着いた。 「これはおごりね」 普段キョンがいたから……って何を考えているの? あいつのことは忘れる、もう決めたことよ! 案の定待ち合わせ場所にはもう三人が来てた。 「早いわねえ、みんな。いつもどれくらいに来てるの?」 「さあ」 にこやかに笑う古泉君。 「そんなことより、喫茶店に行きましょうか?」 うー、おごりかあ。 まあ、四人分だし軽い軽い。 そのとき。 「ハルヒっ」 聞きたくない声が聞こえる。 あたしは三人に目配せした。 ――無視よ、無視。 三人ともうなずく。 「待てよ!」 いつの間にかすぐ後ろでキョンの声が聞こえる。 振り返るとキョンの手が伸びていて……。 古泉君が横からその手を押さえて軽く足を払う。 いい音がして倒れるキョン。 「ほっときましょう」 再び歩き出そうとするあたしの目にあの女が映った。 こんなところにつれて来て、何がしたいの? そんなに見せつけたいの? 「いい加減にしてもらえませんか?」 キョンの目の前でドスを聞かせた声で言う古泉君。 ……ちょっと怖いわよ。 「いい加減にしてほしいのはこっちのほうなんだがな」 どういうこと? ここまで来てまだ言い訳する気? 「それはいったいどう言う理由で?」 「お前らの勘違いについて訂正したくてな」 キョンの横にはいつの間にか有希がいた。 「勘違いする要因など一つもない。あなたはあの女性と親しい。仲もいい。 それだけわかっていれば十分」 キョンが唖然としている。図星なのね? 「確かにそうだが、お前が”わかってない”のは意外だな」 変なことを言い出すキョン。有希は”わかっている”じゃない? あんたとあの人は仲がいい。あたしたちを放ってデートするほどに。 あんたとあの人は親しい。楽しそうに笑いながら話してるし、息もあっている。 この二つがわかってれば十分じゃない? それとも、言い訳じゃなくてのろけに来たの? あんたよりよほど年上のその人のことを? もう頭に来た。ぼこぼこにしてやる。 あたしははり倒す前にののしる言葉をキョンにかけようと口を開く。 その時、その人が口を開いた。 「あなたが涼宮さん?話は何度も聞かされたわよ」 いい度胸してるじゃない、キョン? 「いつも弟がお世話になってます」 ……は? その後、喫茶店で 「と言うわけでしばらく姉がこっちに帰って来てて、街を案内させられたのが先週」 どうやら本当に二人は姉弟だったようだ。 あたしたち以外の三人も神妙に俯いてる。 キョンの解説が終わったところで一つ怖くて聞けなかったことを聞く。 「怒って……ない?」 「いや、全く」 よかった。 「なんだかんだでまだSOS団をやめる気はないしな。これからもよろしく頼むよ団長」 その後あたしたちはキョンのお姉さんも入れて不思議パトロールをした。 あたしはキョンと、お姉さんと一緒。 キョンが自販機で飲み物をかわされている間にお姉さんが言った。 「弟は鈍感だから、その気があるなら積極的にならなきゃ駄目よ」 なんてこと言うんですか? キョンが帰ってくるとお姉さんが 「私は用事があるから帰るね」 「あれ、今日は暇なんじゃないのか」 「ちょっと野暮用がね」 去り際に一言のこしていくお姉さん。 「好きな女の子は悲しませちゃ駄目よ」 飲んでいた飲み物を吹き出すキョン。 『なんてこというんだ!』 被るあたし。 二人とも顔が真っ赤だった。 fin.
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「没ね」 団長机からひらりと紙がなびき、段ボール箱へと落下する。 「ふええ……」 それを見て、貴重な制服姿の朝比奈さんが嘆きの声を漏らす。 学校で制服を着ているのが珍しく思えるなんて我ながらオカシイと思うが、普通じゃないのはこの空間であって、俺の精神はいたって正常だ。 「みくるちゃん。これじゃダメなの。まるで小学校の卒業文集じゃない。未来の話がテーマなんだから、世界の様相くらいは描写しなきゃね」 ハルヒの言葉に朝比奈さんが思わずびくりと反射するが、ハルヒは構わず、 「流線形のエレクトリックスカイカーが上空をヒュンヒュン飛び交ってるとか、鉄分たっぷりの街並みに未来人とグレイとタコとイカが入り混じってるとか。そーいうのがどんな感じで成り立っているのかをドラマチックに想像するの。将来の夢なんかどうでもいいのよ。それにドジを直したいだなんてあたしが許可しないわ。よってそれも却下」 グレイは未来の人間だって説もあるんだから、下手するとその未来は単に魚介類が陸上歩行生物に進化しただけの世界になるかも知れんぞ。まあ、どうでもいっか。 ハルヒは朝比奈さんに対し一通りダメ出しを終えると、ふてぶてしく頬杖をついてピッと朝比奈さんの指定席であるパイプ椅子を指さし、そこに戻ってもう一度やり直しという指令を無言で示した。 「うう」 朝比奈さんがカクンとうなじを垂れる。 それはハルヒの電波な未来観にへこまされているわけじゃあなく、いや実はそれもあるかも知れないが、今はもっと別の理由が考えられる。それはリテイクの厳しさを三倍程度にしちまう理由だ。 指示を受けてずるずると定位置へと引き返す朝比奈さんの後姿を見送りながら、ハルヒは団長机をパシンと叩き鳴らし、 「ちょっとみんな! 今回はノルマも少ないし、ページ数だってやたらになくてもじゅうぶんなの! 気張りなさい!」 俺はやや不機嫌なトーンを呈したハルヒの叱咤を半身に受けながら、パソコンを挟んで対面している古泉へと鋭利にこしらえた視線をありったけ突き刺し、それを受けた古泉は苦笑しながら、予想外でしたという陳謝を俺にアイコンタクトにて返信する。 しかし、これまた困ったことになっちまった。 ハルヒの腕章に黒マジックでしたためられた文字が今は何を表しているのかもう分かっている頃だと思うが、現在の涼宮ハルヒの役職は編集長である。 それはまさに肩に書かれているだけで、自称以外の何者でもないのは既に周知の事実であろう。 とゆうか、打ち上げ花火のような事件のときに作ったその布切れをよっくぞまあ今まで保管しといたもんだ。俺としてはそれが再び陽の目をみることなく、そのまま日に焼けない様に永久保存されといて欲しかったね。今からでも遅くないぞ。ついでにSOS団の皆が抱えてるトラウマも一緒に凍結しといてくれ。 「……それも良いかもね」 カチリ、何か良からぬものを踏んじまった音がした。 幻聴であって欲しいと俺の耳は切に願ったが、 「そうだわっ! SOS団の偉業を未来人に知らしめるために、あたしたちの功績を遺産として残すのよ! 今回の詩集だってもちろん入れなきゃね!」 俺の目は、今にも花びらが炸裂しそうなハルヒスマイルを映していた。 「何にだよ」 わかっちゃいるがな。一応。 「タイムカプセルに決まってるじゃない!」 ハルヒは色めきたって、やけに懐かしいワードを口に出した。 まあ正直なところ、俺もその計画自体に物言いをつけようとは思わん。が、それにはこれから書かされるであろう詩集は入れないぜ。 「なんでよ?」 「なんでだろうな」 そんなもん決まってる。他動詞的に作られたポエムがまともな形を成すとは思えんからだ。 それに前回の機関誌ならハルヒの論文が未来人にも有用だそうだからまだいいものの、今度の詩集ばっかりは後世の人間が見たところで「こいつぁクレイジーなヤロウだ!」とかいった驚嘆句しか出てこないだろう。未来に欧米かぶれがいるかは知ったこっちゃないが、無駄な驚きで寿命を無為に減らすのは気の毒である。なので、出来上がった詩集は俺が墓場まで持っていこうと思う。 「…………」 ――何だか長門の無言が聞こえた気がした。気のせいか? 「ってゆーか、そんなことを話してる場合じゃないでしょうが!」 ハルヒが不機嫌を取り戻す。それもやるけど、と続けて、 「みくるちゃんは受験生だし、あたしたちもボヤボヤしてらんないでしょ。学校があわただしくなる前に今年分の会誌は急いで仕上げないと困るの! これにつまずいてる様じゃ、これから先の団の活動に支障がでちゃうじゃないっ!」 一見まともなことを言っているようだが、よくよく考えればSOS団本位でしかない主張を団長もとい編集長はがなりたてている。 ――と、ここで一度、現在の俺たちの状況を整理しておこう。 場所はもちろんSOS団本部兼文芸部室である。 時の頃をおおまかに言うと、朝比奈さんが受験生なので俺たちは高校二年生ということになり、もう少しばかり掘り下げると一学期の初頭で、その時期に俺たちは二回目の機関誌の製作に取り掛かっているってわけだ。 我らが北校の学校方針から考えるにそれだけでも十分全員が忙しい身の上であることは想像するに難くなければ、朝比奈さんにとっては未来に帰りでもしない限り、この世界で生きていく上で至極当然にリテイクを重ねられている暇などない。 更に悩みの種となっているのが、今回の機関誌の企画である。 詩集だって? 冗談じゃないぜ。 そんなら前回の小説の方が幾分マシだったねと言えるもんだ。 それに古泉、こないだまで俺たちゃあ結構奔走してただろうが。イベントのスパンが短か過ぎる。 俺の視線に込められたそんな訴えを古泉は受信し、窮したように顔を苦ませる。なにか含む所がありそうだ。 ついでに俺たちがどんな奔走をしていたかと言えば、俺の旧友である佐々木との再会、そしてSOS団とは別種の異能、異性質な輩たちとのいざこざや、長門の病気だ。 長門が学校を病欠したとき、一時は天蓋領域とやらの侵攻を受けたのかと心配したのだが、本人いわく只の風邪だったらしい。そうは言っても、長門がウイルスですらも無い下等な雑菌に敗北を喫すること自体異常事態であるのに違いないのだが。 しかし何も知らないハルヒからしてみればそれは正常な状態異常でしかなく、俺たちにも懸念を抱く以上のは出来そうになかったので、長門には一般的な病人に対する普通レベルの介抱を行うことにした。 皆の心配を一身に受ける長門は、 「何か食べたいもんでもあるか?」 「お寿司」 などといった要求はしなかったが、心なしか、守られる側に立った状況を存分に味わっているようだった。 そしてハルヒは泊まり込みで看病するとガヤいだのだが(俺もそれには賛成だったが)長門の強い希望により、俺たちは日付が変わる前には渋々と部屋を出ることとなった。 そして何故か帰宅の途につけという要求は朝比奈さんに対して特に強かったようで、 「特に朝比奈みくる。あなたは早く帰って」 という言葉も賜った。 ……流石にショックだったせいか、次の日の朝比奈さんの挙動はかなり変だった気がする。 しかしまあ、既に出揃っている特殊な奴らは倍になったというのに、一向に異世界人は姿を見せんもんだ。 とは、俺が異種SOS団との諍い時に漏らしてしまった、会いたいという願望とは違った意味の言葉だ。 そのときの俺の言葉に対し、古泉は「もしかしたら、既に異世界人は僕たちと邂逅を果たしているのかも知れません」ときた。どういうことかと尋ねれば、 「異世界人は、異世界に存在することによってその定義を満たします。しかし、例えば未来人は時間を操作することよって、宇宙人は未知の知識によって、そして僕などは超能力の行使によって己の存在をより明確なものにしますが、異世界人はただ異世界から訪れたというだけで、僕たちにとって普通の人間以上の存在には成り得ない可能性があります」 もっとも、それが一般的な人類ならばの話ですがね。と続けて、 「なので、むしろ既にこちらの世界には別の世界へと渡る能力を持った者が存在し、そしてその者は、僕らの関知し得ない世界でSOS団に尽力しているのかも知れません。今の僕たちが存在するのも、その人物が異世界で頑張ってくれているからなのかも知れないのです」 つまり異世界人は異世界で頑張っているということなんだそうな。 どっちにしろ推察の域を出ない話だし、仮に現実だとしてもそれは認識の外だ。 まあ、もしそれが本当なら、一度は会ってみても良いかも知れん。 何だかんだいって、俺はハルヒが作ったSOS団とこの生活を気に入ってるんだからな。 そして異世界人が俺たちと同様同等の苦労をしているであろうことは身を持って分かることなんだし、俺が感謝の意を唱えてその苦労をねぎらっても悪くはあるまいて。 っと、話が脱線気味になっちまった。その軌道修正も兼ねて、少し時間を遡って今回の事の起こりから辿っていってみることにするか。 それでは回想列車、レッツゴー。 ……… …… … 放課後の文芸部室。佐々木たちとハルヒ以下俺たちとの一件も多少の落ち着きを見せ、俺たちSOS団全員が比較的普段通りの活動に従事していたときだった。 コンコン。 「失礼する」 扉をノックする音が聞こえたと思いきや、返答を待たずにすらりと長身な眼鏡の男とそれに伴う女性、つまり腹づもりの黒い生徒会長と喜緑さんが部室へと進入してきた。 「なにしに来たのよ。なんか文句でもあんの? 勝負事なら喜んで受け取るけどね」 生徒会からSOS団に対する文句などは重々にあるだろうし、勝負を受諾されても困る。 「ふん」 会長は入り口に立ったまま、 「君に対する苦言なら山のように持ち合わせているが、生憎そのようなものを言い渡しにこんな辺境までやって来る程私は暇ではないのだ。今日こちらへ足を運んだのは他でもない。一つ気になることがあるものでな」 「なによ。言ってみなさい」 ハルヒの方が偉そうなのは毎度のことだ。 「どうやら文芸部には新入部員が居ないようだが、その分で今年度の文芸活動は一体どうするつもりなのかね?」 「は?」 とは、俺の口をついて出た言葉だ。 ……以前にも、生徒会から文芸部的な活動を求められたことはあった。 それは文芸部およびSOS団潰しのある意味で真っ当な思惑によるものだったのだが、しかしてその実態は裏で古泉が根回しをしていたことによって発生したイベントで、しかも既に事の収まりを見ているはずだ。 それに文芸部部長の長門だって、新年度のクラブ紹介で分かる人が聞けば見事なのであろう論文を発表しているんだし、文芸活動はそれでオールクリアーにしときゃあ通るだろう。いいじゃん、それで。 しかもこれから進路の話やらで忙しくなるっちゅうのに、また機関誌でも発行しろとの一言が発せられるものであれば、ものの見事に層の薄いSOS団はペシャンコになっちまうぜ。本当に俺たちを潰す気か? 会長は。 そう思って俺は古泉に目配せしたが、何故だか古泉もハンサム顔に微小な驚きの色を浮かばせていた。 これは成り行きを見守っていくしかないなと思い、俺はそれ以上言葉を作らなかった。 「もちろん会誌を製作するわよ」 ハルヒは元から俺たちを潰す予定だったらしい。 「いや、それはもう良い。今回文芸部には、来年度用の我が学校のパンフを製作して貰おうかと思っている。潤沢に割り当てられた部費が、不明な団体の意味不明な活動で消費され尽くしてしまってはかなわんからな。それにこの時期は私も色々と忙しい。それもあって、例年は生徒会執行部が製作している学校案内書を君らに一任してみようとなったわけだ」 なるほど。来年用のパンフなら時間だって十分あるし、写真を切り貼りして文章をとってつければいいようなもんだから、苦になるほどじゃないだろうな。それで部費の分配に対する大義名分が得られるのなら、こっちの精神衛生面的にも好都合だ。まともに頑張っている他の部活動員に対し、多少は後ろめたさを感じることがなくなって良い。 「そんなのあんたたちでやってなさいよ。あたしたちもヒマじゃないの。もう会誌の内容も決めてあるんだから」 どうしてもハルヒは俺たちを潰したいらしい。 「まあ……キミたちが自主的に活動を行うと言うのなら、こちらはそれでも構わん。しかしそれが口からでまかせであった場合、私にも存在しないはずの団を抹消するための手間が生じてしまうのを覚えておくといい。そうだな、一度企画書を作成して明示して貰おうか。今から生徒会室まで来たまえ」 「ヒマじゃないって言ってんの! 無駄な心配してる余裕があるんだったら、あんたがここに書類持ってきなさいよ!」 どう考えても生徒会長の方が多忙を極めているはずであろうが、俺は別に会長の擁護をするわけもなく。 「何を言っているんだ君は。私は文芸部部長を呼んでいるのだ。部外者は口を挟まないでくれたまえ」 と……珍しく喜緑さんが長門に合図し、長門は生徒会長についていく。 「ちょっと、待ちなさいってばっ!」 二つのハリケーンが合流を果たしたかのような勢力で、会長の後姿をハルヒが追う。 おかげで残された俺たちと部室はいやに静かだ。 しかしまあ会長。企画書なんぞ出さなくたって、あの団長殿が言い切ったことが実行に移されるのは確実なんだがな。悲しいくらい否が応にも。 「おや、どうしたのですか? 何か他に用事でも?」 ん? 何故かまだ部室には喜緑さんが残っている。 前回の佐々木団との一悶着の際、病床に伏していた長門の代わりに我らSOS団の宇宙人ポストに入って奮闘してくれたので多少の親睦はあるが、 「すみません。実は、お話しておきたいことがあるんです」 身の上話でもするのだろうか? 喜緑さんが部室に取り残された朝比奈さん、古泉、俺に対して言い放つ。 「まずは長門さんの能力が弱体化している件についてなんですが、それは彼女と思念体との接続が弱まってきているためだと考えられます」 ――長門が自分でも制限をかけちゃいるが。 「ほう。しかし何故、長門さんと思念体との接続状況が芳しくないのですか?」 こういう説明を受けている時なんかの古泉の返答は助かるな。 喜緑さんは続けて、 「はい。実は、わたしたちのようなインターフェイスには上の方から一つ禁令が下されているのですが、その禁令に長門さんが少しずつ触れてきているがゆえに、思念体から敬遠されているみたいなんです」 どんな禁令を……ん? そういえば以前に長門から聞いた記憶がある。 「確か、死にたくなっちゃいけないってやつでしたっけ」 そのまま俺は疑問も口に出す。 「長門がですか? 俺にはそんな風には……むしろ、生き生きしてきたように感じますが」 そうだ。長門の鉱石の様だった瞳にも、だんだんと血が巡り出してきたかのような、柔らかさと温かみが度々見受けられるようになってきていた。春休みの映画撮影(予告編のみ)の最中なんか、長門的には最高にハッチャケていたような様だったぜ。死にたいなんて、そりゃ相反してる。 「死にたい、ですか。それはまたどういうお話なのでしょうか?」 確か、アポだかネクロだか、自殺因子って単語もあったかな。 「ふむ……PCD、のように聞き受けられますね」 「古泉。いったい何だ? それは」 「例えば生物の進化の過程において、あらかじめ死が決定された細胞のことです。オタマジャクシの尻尾が、カエルへと変態する際に失われるといったような。その例のようにPCDはむしろポジティブな細胞の消失ですし、これが行われなければ僕たちにも手指などのパーツが形作られません。これをアポトーシスと言います。このように細胞の自殺が計画的に行われる、それがプログラム細胞死なのです。他にもネクローシスという、」 よし解らん。次へ行ってくれたまえ。 喜緑さんが古泉の言葉を受けてコクリと頷き、 「わたしたちインターフェイスは人類と同じ物質で構成されています。我々が死ぬような事態は殆どないのですが、有機的な活動を行う過程によって死の概念が組み上げられてしまうといったことなどが憂慮されます。思念体は元より死の概念を持ち合わせていないので、わたしたちによって情報構成に自殺因子が紛れ込む可能性をひどく嫌っているんです。恐らく、良い変化は期待されませんので」 ニコリと笑って、 「ゆえに、わたしたちは死を思うことを禁じられています」 うん。長門の話もたしかそんな感じだった。 「なるほど。情報統合思念体は群体のような性質を持っていると思うのですが、多細胞生物に見られるPCDにも一応の懸念を発起させている訳ですね」 「そんなところです」 喜緑さんは続けて、 「あと、先日の長門さんの不調は病気などではありません。おそらく、上の方と何かトラブルがあったのだと思います」 まあ、原因が周防九曜じゃないならそんなところだろう。俺は得心したように頷いて、 「して、そう思う理由は?」 と質問した。喜緑さんは微笑を消し、 「……あの日以降、長門さんと思念体との接続が異常なほど軽薄なものとなっているからです。なので、今の長門さんには殆ど力の行使が認められていません。皆さん、どうか長門さんをよろしくお願いします」 無論だね。むしろ注文を受ける前から走り出してる程に気をつけてるさ。 「ありがとうございました、喜緑さん」 俺の言葉を最後に、喜緑さんはぺこりと退室の礼を尽くし部屋を退出した。 そして閉められた扉は程なくしてドバン!と破裂音を上げ、 「おっまたせー! 勢いで計画進めてたら、こんななっちゃった! まぁ、善は急げ!美味しいものははやく食え! ってことでいいわよね! 明日の団活からさっそく原稿の執筆に取りかかるから、みんな楽しみにしてなさい!」 そう声高々と宣言するハルヒの後には長門の姿があり、ハルヒが右手で俺たちへと提示する紙には、 『企画内容:詩集。上稿予定:今週中』 というデススペルだけが書きなぐられていた。 俺には、最早それが死神との契約書にしか見えていなかった。 そんなこんなでやっと次の日になったかと思やぁハルヒは、休み時間が来るたびに何やらハサミで紙をショッキリショッキリいわせていた。 一体お前は何やってんだと聞けば、 「ひみつ! 放課後まで待ってなさいっ!」 と、ニカリとした笑みを作りながら溌剌と意気の良い返事をするばかりだった。 恐らくハルヒは俺の妹のようにハサミを装備することで破壊衝動を満たす化身へと変貌しているわけでなく、なんらかの創作活動に勤しんでいるのだろうから、折角だし作品の完成まで楽しみにしておくか、と俺は自分の席にいるときも心して後のハルヒへ目をやらずにいた。 そうなると俺はこれといってやることもないので、隣の窓越しに広がる過剰に陽気の良い春模様の空を見やり、その余った陽射しを我が身に受けて体内に貯蓄し、無駄に消えゆくエネルギーを減らそうといった仕事に献身していた。 ああ、春ってのはなんでこんなにも素晴らしいのだろうね。爛漫。 そして放課後、文芸部室にて。 朝比奈さんは俺たちにお茶を配膳する業務を終え、既に部室の風景と化していた。長門は最初から風景だった。 部室なら長門に何事もなかろうと、俺はいまだ姿を見せぬハルヒを待つ事もなしに古泉とヘブンオアヘルという創作トランプゲームに興じていた。 どんなゲームかと言えば、最初から片方がジョーカーとエースを手に持ち、相手をかどわかしながら選ばせるといったもので、つまり二人で行うババ抜きの最終決戦だけを抽出しただけである。これは経験によって無駄を省かれた。 しかし、単純なゲームをいかに楽しく行うかというテーマに沿って繰り広げられる熾烈な心理戦も、単純作業の繰り返しには飽きが来るという人間の心理の前には立つこと敵わず、また古泉も俺に敵わず(逆にやり込められている感がないとも言いがたいが)いつの間にか俺たちのやっていることはカードを弄びながらの雑談へと変わっていた。 「しっかしハルヒの奴、何でまた詩なんかに興味を惹かれたんだろうな。俺たちが詩なんか嗜んだ所で、痛い目と身悶えするような駄文を見るだけだろうに」 古泉はカードを四隅の一点だけで倒立させようと試みながら、 「そうでしょうか。感性多感な時分の僕たちの心模様を紙へと投影してみることは、未来の自分がそれを見た際に、その時代の感傷を想起さし得る貴重な宝物になるのではないかと」 「どうだか。次の朝にでも目が覚めたら、貴重な資源をゴミに変えてしまったってのに気がつくだろうぜ。その後に色んな意味で後悔するだけさ」 実体験ですか?という古泉からの質問に対し、俺は見聞きした深夜のラブレター作成理論の応用だと答えておいた。 「それはさておき、今回涼宮さんが機関誌の内容に詩集という形を取ったのも、受験生の朝比奈さんや僕たちへのちょっとした配慮なのかも知れませんね。詩なら、文量が少なくて済みますから」 「それこそ問題だ。少ない文字で成り立たせにゃならんから、構想に余計時間がかかる。それにどんな詩を書くのかも考えにゃならんから、よほど手間だ」 ズバン! 「待たせたわねっ! みんなは一秒が千秋に感じる程に待ちわびていたことだと思うわ! 今回も時間がないから、みんなの詩のテーマはコレで決めちゃいましょうっ!」 心臓を打ち抜くような音を鳴らしてハルヒが扉を押し開いてきた。 驚きの眼を配る朝比奈さんとハルヒの途方もない思い違いに呆気に取られている俺に、ハルヒは何やら励んでいた創作活動の賜物と思われる物体を、左手で作ったOKサインのOを示す指に挟んで見せびらかしていた。 「サイコロ、ですか?」 多分古泉の質問はその通りの答えだろう。 俺にも、それは三角形の紙を八枚セロハンテープで繋ぎ合わせて作られたフローライトナチュラル八面体に見える。 「そっ。特にキョンなんか書き始めるまでにも時間かかりそうだから、今回も内容はアトランダムに決めるわっ! キョン。雑用でしかないあんたのために労を負った団長様に感謝しなさいよね!」 先程の俺の言葉を見れば感謝すべきであろうが、アトランダムの偶然性に対し不満があったので「すまんな」という謝辞にて言葉を終了した。 ハルヒはフッフンと得意げに天井へと高々にサイコロを掲げ、 「それぞれの面にお題が書いてあるから、これをホイコロリンッって投げて出たヤツを詩の内容にすること! 異議があるなら言いながら投げるといいわよ。そして忘れちゃいなさいっ!」 俺には言い捨てる言葉もないが、 「しかしまた何でサイコロなんだ? わざわざ紙を切ってゴミを増やさずとも(そして作らずとも)、前みたいにくじ引きかアミダで決めりゃ良かったじゃないか」 という小さな疑問を投げかけた。 それを聞いたハルヒはチッチッっと右手の人差し指をメトロノームにしながら、 「それじゃバラエティに貧するってものよ! SOS団たるもの、些事の決め方にも広く手をのばしていかなきゃ! そして、ゆくゆくは世界の森羅万象を掴み取るのよっ!」 グッと決めポーズ。ハルヒは今日も絶好調なようである。ま、絶不調でなくて何よりだろうね。世界の平和的に。 だが、恐らくこのネタは外部から、というかテレビから受信して閃いただけだろう。 と、俺は手元に落とされた八面体ダイスを見ながらそう推察してみた。 何故かと言えば、サイコロのやっつの面に書かれているワードはそれぞれ 『私の詩』『未来予想図』『恋の詩』『本音の詩』 『元気が出る詩』『褒められた詩』『失敗した詩』 とあり、後半のテーマが若干日本語として妙なのはハルヒに国語力がないからではなく、お昼の某テレビ番組で転がされているサイコロに書かれた『~話』をそのまま詩という言葉に変換したせいだと思われるからだ。 「じゃっ、順番は団への貢献度が多い人からね! 序列は大事よ! 大きな組織の中では特にねっ!」 じゃ俺からでいいだろ。 「なんでよ? はいっ! 最初は副団長からっ」 SOS団は小規模だから、と説く前に、ハルヒはひょいと俺の手からサイコロをつまみ取り、流れるような動きでそれを古泉副団長へと手渡した。 古泉は卵をのせるような手の平の中でそれを弄び、 「さて、なにがでるかな?」 合唱しようと思ったが、古泉が出す目は大体の予想が立つし、多分予想通りである。 スマイル仮面の古泉のテーマは多くて二択であり、およそ『私』か『本音』だと、 「……おやっ?」 俺と古泉が思わず言葉を漏らす。 「褒められた詩、ですか。僕が以前に書いたポエムの傑作を載せるということでしょうか?」 書いてる姿も含めてそれも見てみたい。が……何だ? 確率論が復活したのか? 本来ならおかしくはないはずなのに俺が妙に思っていると、 「ちがうちがうっ。褒められたときの気持ちやらをポエムにするのよ」 俺にとって古泉のそれは不愉快なポエムになるなと思っていたら、ハルヒは続けざまに、 「でも、振り直しっ。それは国木田が書くから」 国木田? 「そうよ。名誉顧問と準団員には既に振ってもらって、『元気』『褒め』『失敗』は決まってるから」 ハルヒはくるリとメンバーを見回し、 「みんなもカブっちゃったらもう一回! 同じことやっても良いものは生まれないし、SOS団はバラエティに富んでないといけないって言ったでしょ!」 それよりも近い過去に序列がどうのと言ってた気がするが、それは覚えていないらしい。 「って、じゃあ俺はサイコロの振りようもないだろうが。全員が振った後じゃ、必然的に残りの一つに決まっちまうだろ?」 「いいじゃん。特に変わらないわ」 実際問題どうでもよかったし、例え同じサイコロを八つ同時に八人が投げたところで結果は変わらないであろうから、俺はそこで閉口した。 そして古泉は『本音』を出し、次いで長門が『私』、朝比奈さんが『未来予想図』、ここで俺は再度口を開いて抗議の旨を団長、いや編集長へと必死に訴えたが、ハルヒはガイウス・ユリウス・カエサルがルビゴン川を渡った際に言い放ったのと同じ言葉で俺の訴状をねじ伏せた。 ――そしてまた次の日の放課後。現在に至る。 目の前のハルヒが何故こんなにも不機嫌なのかと言えば、 「ちょっとみんな! あの三人はすぐ詩を完成させて持って来たってのに、何でみんなはちーっとも筆が進んでないのよ!」 ハルヒが代わりに言ってくれた。その理由を申せと仰るのであれば、説明するまでもなく「そりゃそうだ」の一言に尽きる。 鶴屋さんは『元気』、国木田は『褒められた』、谷口は『失敗』の詩を書いており、言葉そのままでも違和感のない程にそれぞれピッタリはまった題目だ。 一夜で詩が書けた理由としては、各自それのネタなんていくらでもあるだろうし、万能である鶴屋さんの才の一つに詩的才能が含まれている予測は疑いようもなく、国木田と谷口なんかは適当に済ませたのだろう。 重ねて俺たちときたら、古泉と朝比奈さんのテーマはまるで名探偵にズバリズバリとトリックを言い当てられて言葉を失った犯人のようにアワワとしか言いようがなくなってしまうようなものであるし、『私』の長門なんか前回の小説で自分のことであろう作品を書いているので、俺と共に前回とお題がモロかぶりである。 言うまでもないとは思うが、俺は『恋』のネタである。 もう、そんなもん俺の在庫には最初っからないんだし、長らく入荷待ちの札が掛かってるだけだっつーのに。 それらの理由により、俺はもう一度ハルヒに儚い希望を提訴してみた。 「ハルヒ。じゃあ皆のテーマを変えてくれないか? 俺だって恋なんてもんは幼い頃、従姉妹に一方的に苦い思いをしただけだし、それ以来そういった甘そうなのは味わったためしがないんだ。だから俺の中にあるそんなネタは、前回の小説が最後っ屁でもうグウの音も出ん。終了だ」 却下。という二文字の一言が虚しく飛んでくると思っていたが、 「そうなのですか? むしろ味を感じないのは、あなたにとってそれが空気みたいな物だからなのでは?」 予想に反し、助け舟を渡してやった筈なのにそれを撃沈させるかのような言葉が古泉から飛んできた。 「うん? どういう意味だそれは」 特売アイドルみたいなスタイルのお前と違って、俺にはそんなに身の回りに溢れているもんじゃないんだよ。それにそんなことを言われるとな古泉。俺だって……泣くんだぞ。 「いえいえ、そうではないですよ」 若干苦味を持たせたスマイルで、 「あなたにとって必要不可欠であるにも関わらず、身近に存在しすぎてあなたが気付いていないだけ。ということです」 ほう。そいつは嬉しいじゃないか。つまり、俺に想いを寄せているがそれを伝えられずにいるうら若き乙女の視線が、恋の矢の如く俺の後頭部に突き刺さっているのが古泉には見えるってわけだな。 何だか涙が別の理由で出てきそうだと思っていると、 「古泉くん。それどういうこと? 団長に報告もなしに男女交際をしている輩がいるっていう告発?」 そう古泉に話しかけながらも、ハルヒの視線はまるっきり俺の方へと向いている。 そんな目をされても俺はなにも知らん。 「そうではありません」 今日が、古泉にとって初めてハルヒにノーと言えた記念日となった。 「僕はただ、恋とは意識して感じ取れるものではなく、無意識の内に自分が恋に落ちていたという事実を自らが認識した際に知り得るものだ、という考えを述べたまでですので、他意はありません。ご安心を」 「ああ、なるほどね。それはあたしと似たような捉え方だから良くわかるわ」 うん? お前、恋愛は精神疾患だとか言ってなかったか? 「もちろん。風邪と同じでかかりたいと思ったときにはかからないし、忘れてる頃にはいつの間にやら患っているものってことよ。まさに病気じゃない。あたしは抗体持ってるから絶対かかんないけどね」 蝶がヒラヒラと舞い寄ってくるような古泉の思想が、ハルヒの例えによって一気に消毒液臭くなった。 俺は飛び去った蝶の採集を試みるように、 「じゃあハルヒ。抗体持ってるってんなら、以前に恋患いの経験があるんだな?」 「あるわよ」 「へっ?」 っと、俺がハルヒから思わぬクロスカウンターを喰らって目を丸くしていると、 「はしかやオタフク風邪と一緒よ。ちっちゃい頃に感染しとくべきなの。それは」 ……やれやれ。まったく、現実的なものにはどこまでも夢のない奴だな。非現実に見せる積極性をピコグラム単位でも振り分けてみたらどうかと提案するね。それだけでも、お前には男共がわんさと群がってくることだろうぜ。黙ってりゃあもっと良い。 「ド馬鹿キョン! つまんない奴らがいくら集まっても、あたしの欲求は埋めらんないのっ!」 壊れたミニカーのようにキーキー言っていたハルヒは、俺に近づいてきて急に止まったかと思えば、俺の心臓あたりをスイッチを押すようにしつつ不敵な笑みを浮かべ、 「だからね! あたしが集めて作ったSOS団は、みーんな粒ぞろいの精鋭なのっ! 全員一緒なら意図せずとも世界は盛り上がっちゃうって寸法よ! わかるわねっ!」 「……ああ、よく分かってるさ。もちろんだ」 ――そうだとも。佐々木の閉鎖空間をめちゃくちゃにしたあいつらなんかとは、SOS団は全く存在を異にする。 俺たちだってそれぞれ形は違っちゃいるが、いつの間にかそれはパズルのようにガッチリ組みあがって、今では全員で一つのものになっていたんだ。前回の事件で、俺たちはそれを身にしみて感じる事が出来たのさ。 ――そして、その中心にいるのは……ハルヒ。いつだってお前なんだ。 「なにアホヅラかましてんの! そんな暇あったらとっとと書きなさい! ちなみにテーマ変えはなしっ!」 それは変えて欲しかったが、俺はもうハルヒに抗弁をたれるまでには至らなかった。 ハルヒは憤怒しているように見えたが……その表情はまさに、楽しくて堪らないともの語っていたからな。 しかしいつまで経っても団員の誰一人としてポエムを完成させることはなく、修練の結果は翌日に現れるといったハルヒ理論により、詩の作成は宿題という形で団員に背負わされ、俺たちは普段よりも重い足取りながら、いつもの並びで帰路についていた。 「もしかしたら涼宮さんは、己の能力と僕たちの正体に気付いているかも知れません」 何の脈絡もなしに世界が終焉を迎えそうなことを言い放っているのは、もちろん古泉である。 「そりゃまた、えらく段階を踏まない話だな。なぜそう思う?」 ハルヒと朝比奈さんが先頭、次いでハードカバーを読みふけりながら歩く長門、そして最後尾の俺と古泉。 古泉は部室からずっと手に持っていた物を俺に見せるように掲げ、 「……これですよ」 「って、ハルヒが作った只のサイコロじゃないか」 テーマ決めの際に使用された八面体の紙製サイコロだった。 ちなみに、このサイコロ君は生まれて間もなく存在意義を失ってしまった可哀相な奴である。 というより、また使われるようなことがあっては堪らんので、俺としてはいち早く鉄のゆりかごの中で眠って頂き未来人に起こされる日を待って頂きたい次第である。……そういえば、タイムカプセルって自分たちで掘り起こすもんだったよな? 「その話はまた別の機会にしましょう」 古泉の提案を拒む理由は皆目なかったので、俺は話を聞く態勢に入った。 「何故、今回のテーマを涼宮さんがこのような物で抽選したと思います?」 「そりゃあおそらく、学食でテレビでも見ててネタを頂戴したんだろ」 ふむ、っと古泉は視線のみを数瞬だけ横に流して、 「たとえば、涼宮さん自身がクジの偶然性に疑問を持っていたとします。そして無意識の内に、確率を確認するのにはこの上なく最適であるサイコロという手段を取ったのであれば……涼宮さんは表層の意識に限りなく近い所で、己の能力の存在について勘付いているという可能性が示唆されます」 それを聞いた俺は「へえ、」と一呼吸おいて、 「考えすぎじゃないか? あと、お前たちの正体に気が付いてるという予測は何処から立つんだ?」 ほのかに微笑んだ古泉は手に持っていたサイコロを俺に渡し、俺がそれをつぶさに眺めていると、 「これに書かれているテーマですよ。偶然にしては……余りに、僕らが有する要素に対して的を射すぎている。なので涼宮さんは僕たちの正体を心の何処かで知っていて、これによって確証を得たいのかも知れません。これも多分、無意識の内の行動でしょうがね」 はん。年がら年中どこまでも特殊な存在と一緒に過ごしてたら、だれだって少しはそう思うだろうぜ。 「それも深読みし過ぎだろう。サイコロのネタだって、提供元はシャミセンの親類が経営する洗剤会社に違いない」 この言葉に古泉はいつものスマイルを取り戻し、 「そうですね。それに僕たちが一発で各自のテーマを当てなかった理由は、むしろ涼宮さんは自分にそんな能力があるということを否定したいからなのでしょうし、ひょっとしたら、単純に涼宮さんの力が弱まっているだけなのかもしれませんしね」 ん? ちょっと待て。一つだけ合点がいかない。 「……俺のテーマが『恋』になった理由は何だ?」 「それは本当は朝比奈さんが未来人であるように、あなたも本当は恋を」 「なあ古泉。だいたい生徒会長は何でまたこんな時期に文芸活動を要求してきたんだ? まあ当初の要求は文芸部的なんてのじゃてんでなかったが。機関が関係してるのか?」 「それなんですが」 と古泉はスマイルのレベルを最小にまで下げ、 「これは僕らの手回しによるものではありません。会長なりに考えてみた結果なのかも知れませんが、若干、あの人に生徒会長の仮面が定着し過ぎている感が否めませんね。いえ、もしかしたら、喜緑さんの手によるものだったというのも考えられます」 「ほう。まあそれなら重要だったよな。長門に何かがあったのは分かってたのに、俺たちはその何かまでは知らなかったわけだし」 古泉はフフフと不気味に笑い、 「それなんですが、僕にはおおよその見当が付いています」 一体それはなん、まで俺が言葉を出したときだった。 ゴスンッ! ――今の音は長門の頭から出たのか電柱から出たのか、一体どっちだ!? ……なんて、不毛な論議に変換している場合じゃない。 「ちょっと有希っ! あたま大丈夫!?」 ハルヒは長門がアッパラパーになっていないか心配しているのではなく、本を読みながら電信柱に頭部を強打した長門を案じながら、怪我の有無を確認している。 そして古泉と俺は長門が電柱にケンカを吹っかけた光景を目撃して目を丸くし、朝比奈さんはわたわたと長門に気遣いの言葉を途切れとぎれでかけていた。 「心配しなくていい、平気」 いやゴッツンコした所が小高い山を作って、まだ春だってのに紅葉を迎えてるぞ? 「大丈夫か?」 駆け寄る俺に、 「ありがとう。……みんなも」 たんこぶを抑えるのをガマンしている様に見える長門が答えた。 「でも、珍しいわね。有希が物にぶつかるだなんて。そういえば……見た覚えがないわ。いつも本読みながら歩いてるってのに」 「別のことでも考えてて、そっちに気がいってたんじゃないか? 詩とかポエムとか……ポエムを」 「そ、そうなのかな……」 俺のギャグにハルヒは悩ましい顔を作ってしまったので、 「すまん冗談だ。多分、まだ調子が戻ってなくてフラついたんだろ。長門も読書は中断してハルヒたちと歩くといい」 「…………」 沈黙する長門をハルヒと朝比奈さんに任せ、俺は古泉の話の続きを聞くために後列へと戻った。 「長門さんに怪我はありませんでしたか?」 「ん、おでこがプックリだが心配なさそうだ」 「そうでしたか」 そう話す古泉は、どこか嬉しそうな面持ちである。 「なにか良いことあったか」 ムッとした俺が硬質な感触のする言葉を作ると、 「……むしろ現在、機関はある懸念を抱えて悶然としています。ですが、確かに最近の長門さんの変化については喜ばしいことのように思いますね」 「弱っている長門が良いってのか?」 それでは語弊がありますね、と古泉は微笑をたたえ、 「近頃、というか先程の長門さんもそうなのですが……とても人間味を感じませんか? TFEI端末として弱体化してきているというのは、ちょっとずつ長門さんが人間に近づいていきるという側面があると思うのです。それはあなたにとって嬉しいことでしょう? もちろん、僕にとってもね」 俺を目で落としてどうするんだと言わんばかりの温和な視線で、古泉はふわりと柔和な笑顔を作った。 「……そうかもな。俺にとって、そりゃもちろん嬉しいことだ。それに俺たちだけじゃない。ハルヒに、朝比奈さんに、そして何より……長門自身にとってな」 そう。長門にむける心配は、そろそろ見方を変えなけりゃならんのかもしれん。 力を失っていく宇宙人に対するそれから、細腕で柔弱な少女への気配りへと。 「ところで、お前が抱えてる懸念ってのは一体なんなんだ? 俺以外に話せる奴なんていないだろうし、話してみるだけでも多少違うんじゃないか?」 俺の言葉に古泉はどんな表情を出して良いのか解らないといった顔つきになり、 「……そうですね。話しておいた方が良いかも知れません。あなたには」 「なんだ?」 俺の目を見て、 「程ない以前、閉鎖空間と《神人》が久しぶりに乱発された時期がありましたよね?」 「ああ、佐々木とハルヒが出会った日以降だったっけ。お前でも疲労の色が隠せてなかったよな」 「それなんですが、閉鎖空間の発生は二週間ほど前……特定すれば土曜日にまるっきり沈静化しました」 土曜日? ――ああ、俺が佐々木たちと会合した前日か。だが、 「良かったじゃないか。この言葉以外に何がある?」 古泉は全然良くないことを話すような顔で、 「それが、不可解な点がいくつかあるのですよ」 「一体どこにあると言うんだ?」 「まず、何故に突然閉鎖空間の発生が沈黙したのか。機関の諜報部をもってしても原因が判明しません。そして他に……これは閉鎖空間内で《神人》の討伐を担う役割の僕や仲間たちしか感じないのですが……」 古泉は前方で談笑しているハルヒを一瞥し、 「閉鎖空間は世界中の何処にも発生していないにも関わらず、僕たちにはそれが存在しているという確信が、沈静化した直後から心の隅の方で、こうしている今でもくすぶり続けているのです。……それによって一つの推測が立つのですが、これは多分、あなたは聞きたくもない話です」 「聞きたくないかは俺が判断する。さわりだけ言ってくれ」 古泉は眼に真剣をやつし、神妙な雰囲気でこう言った。 「――涼宮さんが、まさに神と呼ぶに相応しくなったのではないか? という内容です」 「そうか。そりゃ全くもって聞くだけ無意味な話だな」 ハルヒが神だって? あいつはいつだって奇想天外な行動を起こしちゃいるが、根っこの方は特に変わりのない普通の女の子じゃないか。お前だって良く知ってるはずだろ。そんなの、考えるだけバカらしいってもんだ。 「ええ、全くです。仮にこの推論が当たっていたとしても、何が起こるのか皆目見当が付かない故に対処の方法も思い浮かびません。なので案じたところでどうにもなりませんし、ただの杞憂であればなお良いだけです。すみません、あなたはこの話を忘れて下さい。それに僕も――」 古泉は、長門の後ろ姿を温もりさえ感じる視線で見つめながら、 「……いかなる憂いすら、今の彼女を見ていると消し飛んでしまいますよ」 そうだな。俺たちが憂うべきものは、今のところ帰ってからどうやったらポエムを書かないで済むか考えることだけだろうぜ。 「……まあ、そうですね」 古泉はまた思案顔を作り、悩ましげに顎を支えていた。これはこいつの癖になっちまったのかね? 「無駄な心配はしないに限るぞ。時間と神経を無為に減らすだけだ」 いつもより元気はないが、それでも十分爽やかなスマイルで、 「……そうすることにしましょう。まあ、詩は頑張って執筆してみますがね」 「ああ。やっぱり俺もお前にならって机の前で頑張ってみるかね。思えば、書かないで済むかなんて思案することだって無駄なんだしな」 「ふふ。お互い頑張りましょう」 そうやって、その日俺たちはそれぞれ自分の家へと足を辿り着かせた。 ……さて、無から有を創造するある意味で神的な作業に入るとするか。 ――俺はこのとき、この平穏は当分の間続くものだと信じていた。 SOS団は今までにない程まとまっていたし、ハルヒと長門が落ち着いてきているのは良い変化だと疑わなかったからだ。 だが、それは違った。それらの吉兆は、裏を返せば……最悪な事態が引き起こされる前兆でもあったんだ――。 第一章
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「ねぇキョン?」「ちょっと!聞いてるの?キョン!?」「それでねキョンはね、」「あっ!そうそう、キョンそれからね」「キョンっ!」「そう言えばキョンは…」「キョン明日はね…」「ねぇキョンは?」「ほらキョン!ちゃんと聞きなさい!」 ……まったく飯の時とか2人でテレビ見てる時位は静かにして欲しいな。 孤島の1件からハルヒと付き合う事になってしばらく経つ、授業中も、部活の時も、その後も、休日も、寝る前でさえ電話で、そう…ほぼ丸一日中俺と一緒にいるのに、なんでこいつは話題が尽きないのかね? まるでマシンガンやアサルトライフル…いやガトリングガンやバルカン砲だな…いや弾切れがある分羅列した銃器の方がましだな。こいつの話題は切れないしな。 「なぁハルヒ…何でお前はそんなに話題が尽きないんだ?こんなにずっと一緒に居るのによ。」 「ったく…たまに自分から口を開いたと思ったら…何よそれは?良い?あたし達はNTじゃないから、黙っていても分かり合えないのよ?」 ……そう言えばこの前一緒に某ロボットアニメを見たな… 「それにあたし達は恋人どうしなのよ!?お互いが一番に分かり合ってなきゃだめなの?それ位はアホキョンにでも分かるでしょ?だから、こうやって毎日毎日あたしが話してるのよ!」 なるほどな…でも俺もっと簡単に分かり合える方法知ってるぜ? 俺は無言でハルヒを抱き締めた。 「ちょっと…キョン!?」 ハルヒのヤツは、顔真っ赤にして抗議しながらも、俺に体を預けて大人しく抱き締められている。ったく…こうしてりゃ静かなんだけどな。 「……分かったわよ…じゃあこれからは、いつでも分かり合える様にこうして抱き締めなさい…良いわね……」 真っ赤にしてゴニョゴニョ言うハルヒは可愛いが……墓穴ほったなこりゃ… 終わり
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第二章 断絶 週のあけた月曜日。あたしは不機嫌オーラをばらまきながら登校した。 半径5メートル以内に人がいないのがわかる。 教室に入り、誰も座っていない前の席を睨む。 二年生になっても変わらないこの位置関係に怒りを覚えたのは初めてだ。 あいつを見ていなければいけないなんて。 幸いなことに今日は席替えがある。 入学してからずっと続いていた偶然が途切れることを祈った。 遅刻ギリギリにあいつが教室に入ってくる。 席に鞄をおろして声をかけてくる。 「土曜日はすまなかった」 無視。 「今度からはちゃんと行くからさ」 無視。 「……?おーい」 無視。 ため息をつくとキョンは前を向き、岡部が入って来た。 授業中はイライラしっぱなしでろくに話も聞いていなかったけど 学校の授業なんて余裕よ、余裕。 こんなのもわからないなんて本当にキョンはバカよね。 待ちに待った席替え。 あたしは窓際一番後ろ。 キョンは廊下側一番前。 教室はパニック寸前だった。 ……この程度のことで騒がないでよ。 キョンを谷口のバカと国木田が慰めている。キョンは憮然と、と言うか唖然としている。 キョンは鞄を持つと教室をでた。 掃除を終わらせ我がSOS団部室へ向かう。 扉を開けるとそこには古泉君と有希とみくるちゃんと…… キョンがいた。 あたしの我慢は限界に近づいている。 あたしたちに嘘ついてまでデートしてたやつがのうのうと 『あたしたち』といようとする。 「キョン」 「何だ?」 普段と全く変わらない様子についに切れた。 「なんでここにいるの」 「いちゃ悪いのか?」 「ここはSOS団の部室よ」 「それが?」 「あたしたちに嘘ついて、SOS団の用事を放って、デートしたやつに ここにいる資格はないわ」 怪訝な顔をするキョン。 「ちょっと、ま……」 もうこれ以上聞きたくない。 『『出てけ!』』 ”四重奏”とともに古泉君につかみあげられて廊下に引っ張られるキョン。 ほかの四人も我慢の限界だったみたい。 「おい、ちょっと待てって。話を……」 鈍い音がしてキョンが黙る。 やけにニコヤかな古泉君が部室に入って鍵を閉めた。 改めて部室内を見渡すとみんなの怒り具合がわかる。 古泉君はボードゲームを出してなかったし、 湯のみも有希と古泉君の分しか出てない。 「はい、みんな注目!邪魔者も出てったところで次回の不思議探索について ミーティングを行います」 ここでいったん間。 「今度の土曜日十時に街に集合よ。遅れたら、罰金だから!」 空気が一瞬重くなる。 「罰金=キョン」の方程式が成り立っているみたいだ。 「そうですね。そっちの方がいいでしょう」 古泉君がいつものように朗らかに同意する。 「はい、お茶です」 それから他愛もない談笑で時が過ぎ、有希が本を閉じてあたしたちは下校する。 そのときあたしは廊下にあるものを見つけた。 「ねえ、古泉君」 「何でしょう?」 笑って答えながら、古泉君もあたしと同じ場所を見ている。 「どのくらい強くあいつを殴ったの?」 転々と跡を残しているそれは……。 「見た通りだと思いますよ」 そう、それは血だった。 <幕間2> 朝、学校についてハルヒに土曜日のことについて謝ったが無視された。 悪いことしたな、とは思ったけどここまでひどい扱いを受けるとは。 そのことに少なからずへこんでいて、授業には全く身が入らん。 わかんねえ……、ってつぶやいたら後ろのハルヒに鼻で笑われたような気がする。 俺が何をしたってんだ。 席替えがあった。どうせハルヒの前だろうって思ってたんだが 何が起きたのか、一番遠いところに座るはめになった。 ……ざわざわしすぎだお前ら。 偶然だろ、席替えなんて。 国木田と谷口がどうやら慰めてくれてるらしいがそんなことは気にならなかった。 とりあえず部室に行ってほかのやつらに話でも聞こうか。 と思ったんだが、みんなの反応がなんか――というか、ものすごく――よそよそしい。 古泉はボードゲームを誘ってこないし、朝比奈さんは俺にお茶を入れてくれない。 長門に至っては怒りの視線をぶつけてくる。 ……はげるって。ストレスで。 しばらくして掃除当番だったハルヒが入って来た。 こっちを見てものすごく不快そうな顔をする。 そして訳の分からん難癖を付けてきやがった。 「ここはSOS団の部室よ」 ってそれくらい知ってるさ。なんで俺がいちゃいけないんだ? ……。 土曜日?デート? ああ、『あれ』か。『あれ』を見られてたのか。 そりゃ、事情を知らなきゃ怒るだろうな。 とりあえず説明しようと口を開いた俺を……。 古泉がつかんで廊下に投げ飛ばしていた。 長門にまで「出てけ」って言われたのは正直きつい。 もう一度説明しようとした俺を古泉が思いっきり殴る。 壁に頭をぶつけて意識が遠ざかる。 気づくと部室内では次の土曜日のことを話していた。 こうなったら最終手段かな。 痛む頭を抑えて俺は学校を後にした。 終章
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1乙 「やあ、おはよう。1乙。21スレ目、だね。21といえば、ブラックジャックを思い出すね。 知ってるだろう? ほらカジノで遊べるトランプのゲームさ。カジノのゲームにしては珍し く、勝つことが不可能ではないゲームであったのだが、最近はそうでもないらしいね。ち なみにトランプというのは日本独自の通称というヤツで、欧米ではプレイングカードと呼 ぶのが一般的なようだ。さて、いわゆる花札や百人一首カルタというものがこのプレイン グカードの原型が日本に輸入された後に、日本で独自に進化したものだというのは知っ ているかな? カルタという言葉は、ポルトガル語が由来の言葉でね。ポルトガル語では cartaと綴る。これは英語で言うcardに相当する言葉のようだね。プレイングカードの起源 は中国であるという説が最近は有力であるようだから、カルタは世界をほぼ一周してきた というわけだね。原作を元にした二次創作が独自の進化を遂げ、別種の物になるという点 は、このスレッドにおける僕や藤原を想起させるね。20スレ、つまり約2万レスを消費して、 僕はキミたちの中に独自のイメージを持つ存在になれたようだね。原作『涼宮ハルヒの分裂』 でちょっと出ただけの僕というキャラクターにそれだけの思い入れをしてもらえる。キャラク ター小説のキャラクターとして冥利に尽きるというところだね。うん、まぁそれでね。何が言 いたいかというと、その、なんだね。 ありがとう、これからもよろしく。 なんのことはない、この一言を導くために僕はこれだけの量の発言をしているというわけさ。 まぁ、これも僕のキャラクターと言える物なのだろう。それじゃあ、また、次のスレッドで」 そう言って、佐々木は薄く笑みの形に唇を曲げた。 今日の佐々木さんは、少し照れているようです。
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※ 涼宮ハルヒの鬱憤のアナザーストーリーです 季節はもう秋。 空模様は冬支度を始めるように首を垂れ、 風はキンモクセイの香りと共に鼻をそっとくすぐる。 彼は人との出会いが自分の心の内を乱し、 少しずつ緩んできている事に時の流れを感じている。 夏休みから学園祭まで一気に進んでいた時計の針は 息切れをしたかのように歩を緩めていたが、 周りが熱を冷ましていくのとは相反するように 彼の日常は慌ただしく、動き出していく―――― 夢をつんざく音が聞こえる… 渇いた喉にイライラしながら鬱陶しい音に手を伸ばす。 無意識に一つ溜息が漏れた。 朝も寝起きから閉鎖空間か… ここの所、涼宮ハルヒの精神は安定していたが。 それは最近、暇と鬱憤を紛らわせてくれるイベント続きだったからか? 僕は安穏とした日々が続く事に満足し過ぎているのかもしれない。 何にせよ、発生してしまったものは仕方がない… 発生場所に到着するとスーツ姿の森園生が腕組みをしながら立っていた。 「森さん、今の状況は?」 森の鋭い目線が突き刺さる。 「古泉、遅い…連絡は行ってたでしょう? 朝だからと言って寝惚けている暇があったら もっと迅速に行動出来るよう心掛けなさい」 手厳しい、と言うか怖い。 いつも閉鎖空間に飛び込み神人と相対する度に感じる。 これは涼宮ハルヒの純粋な想いから溢れてくる水のようなもの。 綺麗だけど、切なくて、苦しくて、柔らかくて、暴力的で… これは本当に僕らが力ずくでも抑えるべき代物なのだろうか? 誰にだってある感情、僕自身にもある。 日常はつまらない、下らないと思い、溜息を漏らしては 幸せをまた一つどこかへ落としてくる事が…。 僕らは本当に世界の安定に一役買っているのだろうか、と。 「ご苦労様」 森は笑顔で皆を出迎えた。 「今日のはそれほど大事にならずに済みました。 以前の報告通り涼宮ハルヒは最近、彼の成績等、色々と思う所があるようですから 機関としても何らかの対策を打たないといけないかもしれませんね」 森は首を傾げた。 「そうね。私にも経験あるけれど女の子にはそういう時がままあるものよ」 女の子って歳じゃ… その時の頭の中を見透かしたような森の視線に一旦、思考を停止させた。 「何の大事件も起こらずに安定していてくれないものかしら…」 腕時計を見ると10時を回っている。 「また遅刻か…今日、学校サボろうかな?」 ふと漏れた愚痴にもならないような言葉に森が噛み付いてきた。 「古泉、またあなたは機関の仕事にかこつけてすぐにサボろうとする! もうちょっと機関の人間としての自覚を持ちなさい。 あなたは機関の人間の中では涼宮ハルヒに最も近しい人間。 彼女を監視し、彼女により安定した日常を過ごしてもらうのに 機関にとってあなたの存在が重要な鍵である事は重々、承知しているでしょう? それに機関はあなたに学業まで疎かにしろとは言っていない。 新川に車を用意させたから、時間のある時はちゃんと学校に行きなさい」 また森さんに説教された… 車は朝の街の喧噪の中を学校へ向かって滑り出した。 僕がサボらず学校に行くように森さんの監視付きで。 1年半この学校に通ってきたがSOS団の部室以外では この時間限定で、この人のいない学校までの坂道は結構、気に入っている。 「古泉、今日は夜の9時から定例会議がありますから 涼宮ハルヒの監視後にちゃんとサボらないように顔出しなさいよ」 はい、了解です。僕の作り笑顔はこの人に鍛えられたといっても過言ではない。 キンモクセイの香りが鼻をくすぐる坂道は秋になり涼しく寝そべっている。 昼休み、SOS団の部室に足を運ぶと部屋の中から 廊下まで響く涼宮ハルヒの上機嫌な声が聞こえてきた。 どうやら朝までの不安定な精神は落ち着きを取り戻したようだ。 「ふっふっふっ…ハロウィンよ!!小さい頃、読んだ絵本には 魔人、ドラキュラ、フランケンシュタイン、魔女、黒猫、コウモリ、ゾンビ、 黒魔術なんかが出てきて、事件と謎の匂いがプンプンする話だったわ。 という訳で今週はハロウィン調査を開始するの。 ハロウィンってまずはコスプレから始まるのよね。 だからまずは全員どんなコスプレにするかパソコンで調べないと!!」 なるほど、また新しい『遊び場』を見つけた訳ですか。 そっと部室に入ると何やら話し込んでいるようだった。 「へぇ~、ハロウィンではお菓子を配るのね。 ついでに秋の味覚も集めちゃおうかしら?」 長門有希も珍しく強い興味を示したようですね。 僕も秋の味覚には興味あります。 「ハロウィンパーティーですか、面白いアイデアですね」 彼に話し掛けると驚いたような顔をこちらに向けてきた。 まるでくり抜かれたハロウィンのカボチャのような顔ですよ? 「じゃあ、決定ね。古泉君、みくるちゃんと?あとせっかくのパーティーだから 鶴屋さんにも伝えといてくれる?受験勉強の邪魔でなければって」 思い付いたら即行動、涼宮ハルヒの精神にここまでのエネルギーが 満ち溢れていれば、余程の事が無い限りは大丈夫でしょう。 「わかりました」 「じゃあ行くわよ、キョン」 ケルト民族のハロウィン祭ではひとつの大きな篝(かがり)火から 村の家々に火を分け合う事でお互いを 共通の絆を持つ一つに繋がった輪としている。 SOS団にとってその絆は涼宮ハルヒという 大きな篝火を中心にして出来たものだろう。 時々、全てを燃やし尽くすように暴れるその大きな篝火を鎮める為、 彼は水になりたいと願っている。 ただ、今の彼に出来るのは彼女に向かって欺瞞の笑顔を差し出す事だけ。 いつか素直な気持ちで友として笑い合いたいと願っている―――― 涼宮ハルヒが形式的な連絡網と称して交換した為、 一応、SOS団に関わる面々の連絡先は入手している。 メールは時々、素の人間性が引き出される事があって苦手です…。 まずは森さんに報告ですね。 あと、涼宮ハルヒの為と称して機関に秋の味覚も要求しちゃいましょう。 To:森園生 タイトル:報告 本文:お疲れ様です。古泉一樹です。 涼宮ハルヒの急遽の発案により、 ハロウィンパーティーを開催する事になりました。 彼女の精神は朝とは違い、非常に安定したものと見受けられます。 彼女はお菓子や秋の味覚なども所望している様子です。 機関でも多少、用意して頂けると幸いです。 ふぅ~…機関や森さんへの報告はお決まりの文章で楽なのですが、 次は朝比奈みくるへのメールか…文面が難しいですね…。 朝比奈みくるは僕を含め、機関に対して強い不信感を持ってますからね。 あまり強い刺激を与える事で警戒心を抱かせ、今後の活動に 悪影響を及ぼしたくはありませんね。 文面を少し明るめにしておいた方が宜しいのでしょうか? To:朝比奈みくる タイトル:無題 本文:どうも!!古泉一樹ですアヒャヒャヘ(゚∀゚*)ノヽ(*゚∀゚)ノアヒャヒャ 涼宮さんの発案により今週のSOS団の活動はハロウィン調査を行うそうです。 お菓子と秋の味覚を集めたハロウィンコスプレパーティーも開くそうなので 時間の都合が付くようならば鶴屋さんもお誘い下さいとの事です(m。_。)m では、宜しくお願いしますo( ▽▽ )oキャハハ 頑張って絵文字を使ってみたのですが、 皆さんが僕に対して抱いているイメージより 多少、メールのテンションが高過ぎたでしょうか…? 送信ボタンを押してから少し後悔しています。 おや?もう森さんから返信がありましたね。 From:森園生 タイトル:Re 報告 本文:ハロウィンの件に関しては了解致しました。 速やかに上に掛け合い、準備に入ります。 恐らく何の問題も無く、通過すると思われます。 ただあくまで涼宮ハルヒの監視と精神の安定の為という目的を忘れずに。 あなたは時々、遊び心が過ぎますからね。 色々とバレているのでしょうか?怖いですね…。 そうだ。絵文字の使い方に関して森さんに絵文字を使ってみて 使用法などに問題が無いか、確かめてみる必要がありますね。 森さんからなら的確なアドバイスが得られそうな気がします。 To:森園生 タイトル:Re Re 報告 本文:了解ですO(≧▽≦)O ワーイ♪ お手数お掛け致します!!アリガタビーム!!(ノ・_・)‥‥…━━━━━☆ピーー 機関からの支援の事をハロウィンパーティーの発案者でもある 彼ら2人にも伝えておきますか… そういえば携帯電話に入っている彼のメモリーを見るといつも思うのですが、 彼の本名ってなんでしたっけ?キョンとばかり呼ばれているので ついつい忘れてしまいますね。 涼宮さんと仲良くやっていてくれると良いのですが。 To:Kyon タイトル:無題 本文:今朝まで発生していた閉鎖空間も消えてくれて、 機関も僕もあなたにはいつも感謝しきりです。 お礼といっては何ですが、僕と機関から 今回のハロウィンパーティーに幾分かの差し入れを出します。 涼宮さんの事はあなたにお任せします。 では、頑張って下さいねp|  ̄∀ ̄ |q ファイトッ!! お?森さんは仕事だけでなく、いつもメールを返すのも早いですね。 さすが機関の中枢を担うお方だ。 From:森園生 タイトル:Re Re Re 報告 本文:もう一度言いますが、ちゃんと気を引き締めなさい。 あと、あなたが絵文字を使うのは気持ちが悪いから止めなさい。 森さん…的確なアドバイス、ありがとうございます………。 秋の空というものはどうにもうつろいやすいもので それを人の心に例えたりもしますが、 雨には気持ちもしょげるもの。 夕方になり降り出した雨は雨脚を強め、 街をオレンジ色から灰色に変えていく。 朝比奈みくると鶴屋さんが持ってきたスモークチーズの香り漂う SOS団の部室では3人が三者三様の時間を過ごしています。 朝比奈みくるは妙な沈黙に耐えられなかったのであろう… お茶を2人に差し出しながら話し掛けてきました。 彼らがいない時にこうやって会話を交わすのは慣れないものです。 「涼宮さんとキョンくんのいない部室って静かですね。」 「そうですね。こういう部室も嫌いではありませんが、やはり物足りないですね。 ところで鶴屋さんはどこへ?」 「チーズに合う飲み物が必要とかでどこかへ行ってしまいました。」 「それは危険な香りがしますね。」 その時、大きな足音が聞こえたと思うと勢いを付けて扉が開きました。 「お待った~!!」 鶴屋さんでしたか。 「おっや~、あの2人はまっだ帰ってきてないっかな~?? ま~たどっかでイチャついてんのかね~?」 「鶴屋さん、それ…」 「あぁ、ワインっさ!」 「だ、大丈夫なんですか~?受験前に。」 「めがっさ美味しいにょろ!まっ息抜き♪息抜き♪まずは軽く一杯。」 息抜きの範疇を超えてますね。? 「遅いですね~涼宮さんとキョンくん…」 と、音も立てずに静かに扉が開くと雨でずぶ濡れの彼が1人で立っていました。 非常に嫌な予感がしますね。 「あれ?涼宮さんは?」 「分からん…」 「私は付き合いだけで無理して皆とここにいる訳じゃありません!!」 朝比奈みくるが珍しく、怒りを露にしている。 「ごめんなさい…」 「なんでキョンくん、そんな事言ったんですか!? いい加減、涼宮さんの気持ちに気付いてあげて下さい!! 涼宮さんは私達の為というよりもキョンくんの為に きっとこのハロウィンパーティーをやろうって言ったんですよ!」 涼宮ハルヒはここ最近、部室で色々と計画を練っていたが… ハロウィンパーティーにはやはりそのような意味があったのですね。 「涼宮さん、キョンくんが最近、成績の事とかで悩んでるってずっと気にしてたんです。 だから涼宮さん、部室にいる時に一人でキョンくんの為に解説用のノートや 一緒に期末テストの勉強する為のスケジュール作ったりして、 来週からはスパルタで行くから今週くらいはキョンくんと 何か息抜き出来る事して気持ちを晴らして羽を伸ばしておこうって言ってたんです!」 「あ~ぁ、今回はやっちゃったね~!キョンくん。」 今の鶴屋さんの意見には実に同感です。 事の顛末を簡潔に申し上げますと、 涼宮ハルヒは彼が最近、学業の成績などで悩んでいる事に危惧し、 期末テストで彼の手助けをしようとしていました。 その前に溜まっている彼のストレスをパーッとガス抜きさせる為に SOS団でハロウィンパーティーの企画を立ち上げたのだが、 その事に対し彼は涼宮ハルヒに受験生の朝比奈みくるや鶴屋さんまで こんな下らない事に巻き込んで計画性が無さ過ぎる、自分は帰って勉強がしたい と、涼宮さんに責め立て街中でそのまま喧嘩別れしてきたという… 最近は彼とも打ち解けてきて僕も彼との友人関係を継続したいと 願ってはいますが、今だけは彼の事を『この男』と呼ばせて頂きたい。 この男は時々、とても無神経になるのが癇に障る。 涼宮ハルヒの想いに気が付いていない訳がないとは思うのだが… 涼宮ハルヒを監視し、安定に導く為の鍵としてこの男の存在は欠かせない。 それがここまで鈍感だとさすがにイライラしてくる。 機関で拘束して拷問にでも掛けてやろうかという気さえしてくる。 あぁ~…やはり案の定、機関からの連絡が入ってきた。 「ふぅ~…すみません、どうやら急なバイトが入ってしまったようです。」 この男を睨みつけて恨み節を放った所で何も解決しないのは百も承知なのだが…。 「まぁ正確には涼宮さんらしく、団長の責務として団員の世話まで しっかりやらないといけないから大変だ、とおっしゃってましたが。 あなたの悩みは彼女の悩みでもあるんですよ。」 しれっとまるで分からないという顔をしているのが非常に癪だ…。 さすがに鼻につきますよ、その態度には。 「まだ分からないんですか?彼女からすれば何故、自分に相談してくれないのか? 悩みがあるなら共有してくれないのか?とね。 あなたに涼宮さんをお任せしたのは失敗でしたかね…では、失礼。」 少しばかり感情的になり過ぎたようだ…。 ただこの男に一言でも言わないと気が済まなかったのも事実。 しかし、一日で2回目ともなるとさすがにうんざりだ…。 森さんに一度、連絡を取っておこう。 「もしもし、古泉です」 森さんの携帯からノイズ混じりの声が聞こえる。 「緊急事態なので私が車を回します。話はそこで伺います」 と言われ、一方的に電話は切られた。 坂道を下ると猛スピードで黒塗りの車が目の前に滑り込んできた。 「乗りなさい、古泉」 助手席に乗り込み、事情を説明していると 森さんの表情は見る見る険しくなっていった。 隣にいる僕でさえ、緊張してしまう程だ。 「…という事だそうです」 その話を聞いた森さんは両拳をハンドルに一度、思いっきり叩き付けた。 「あんの鈍感男!!何、考えてんのよ!?」 …も、森さん? 「あれは本当に女心の欠片も理解していないわね!! それとも知っててわざとそんな真似してんの!? ただの度胸が無いヘタレ!?それともゲイか何か!? 少なくとも男の風上にも置けない奴だわ!!」 さすがの僕でもここまで怒り狂っている森さんは見た事がありません… 「大体、何よ!?のらりくらり逃げてばかりで、 涼宮ハルヒにキスするなり、押し倒すなり、さっさとヤっちゃえば良いのよ!!」 いや、さすがにそれは… 「か、彼にも彼の想いというものがありますから。そこまで強制させる訳には…」 森さんの勢いに気圧されて僕が逆になだめる立場になってしまった… 「分かってるわよ、そんな事!!でも、それならそれで真摯な応え方というものが あるでしょうが!?一言、言ってやんないと気が済まないわ!!」 そういえば、ちょっと前に森さん、男と別れたとかで 酒に溺れて愚痴をこぼしながら暴れ回ってたな…女は怖い…。 現場に付くと落雷と豪雨が入り混じった暗闇のような閉鎖空間が ぽっかり口を開けていた。 「これは非常に危険な状態ですね。このような閉鎖空間は初めてです」 冷静さを取り戻した森さんが話し始めた。 「どうやらこれまでのものとは形も歪で性質も全く異なるもののようね。 今、機関の人間を総員配置して解決に当たっています」 「世界が呑み込まれてしまう危険性もありますね。とにかく空間内に入ってみます」 閉鎖空間の入り口に手を伸ばした瞬間、雷に打たれたような衝撃が走り、 弾き飛ばされてしまった…空間内に侵入出来ない…?何故? その時、空間内より機関の仲間である能力者達が投げ出されてきた。 「皆さん、どうなさったのです!?」 能力者達は怪我を負っている。機関の能力者の中でリーダー格の男が語り始めた。 「分からん…閉鎖空間より追い出されてしまった。 空間内に涼宮ハルヒが存在している感覚は掴める。 しかし、どうやら涼宮ハルヒはこの世にある全ての存在を拒絶し始めたようだ。 私達の能力も上手くコントロール出来なくなっている」 「新川!!」 森さんは新川さんを呼び寄せながら僕の肩に手を置いた。 「とにかく彼らの治療は新川に任せましょう。 機関でも最も能力の高い部類に入る古泉の能力を持ってしても 駄目だというのならもう手は一つしかありません」 今は不本意だが、機関の人間が手を打てないとならば やはり涼宮ハルヒに対しては鍵としての彼の力に頼り、協力を仰ぐしかない。 新川さんと怪我をしている他の能力者達は治療に向かい、僕はこの場で待機。 彼を捜し、迎えに行く役は森さん自らが有無を言わさずに自分がやると申し出た。 きっと彼に対して森さんはどうしても『一言』言わないと気が済まないのだろう。 精神的に潰されなければ良いのですが…。 待機と言っても駅前の広場で一人立ち尽くしているだけだから 特にこれと言ってやる事も出来る事もない。 閉鎖空間には相変わらず、拒絶されたままだ。 雨脚が強くなってきた。傘に打たれる水の音が激しさを増していく。 「古泉君…」 ふいに声を掛けられた。振り返るとそこには朝比奈みくると長門有希の姿があった。 「朝比奈さん…長門さん…どうなさったのです?」 傘を差している二人の髪は秋雨に濡れていた。 「キョンくんと古泉君が飛び出していってから私達、 いてもたってもいられなくて…力になる事は出来ないかもしれませんけど、 キョンくんと涼宮さんの事、放っておく訳にもいかないんです」 それでとりあえず彼ら二人が喧嘩別れしたこの駅前の広場にやって来た訳ですか。 「僕も同じ想いです。どうも彼ら二人は素直じゃないと言いますか、 最近は友人として見て見ぬ振りが出来なくなってきました」 これは率直な想いだ。 以前の僕なら現状維持で見過ごすべき所は見過ごしていただろう。 「…そう」 3人、広場で雨に打たれながら無言で彼を待っていた。 結局、僕らはなんだかんだ言いながらも お互いを信頼し合っているのかもしれない。 その時、黒塗りの車が水しぶきを立てながらブレーキを掛けた。 「お待ちしていましたよ。」 涼宮ハルヒという暴走したアクセルに対してブレーキとなれるのはあなただけ。 これでも僕らはあなたのやる時はやるという一本、芯の通った所が好きでもあり、信じてもいます。 「情報統合思念体は混乱している。 現在の涼宮ハルヒは有機生命体の持つ全ての感情を?強い力で衝突させ、爆発を起こしかけている。 本来、情報統合思念体にとって感情とはエラーと認識されるもの。 それが処理出来ないほどの量と質で埋め尽くされている。 情報統合思念体にとって自らの存在を消去し得る 触れる事は危険且つ、不可能な領域として認識した。 だから、あなたに任せる。」 最後の一言こそ、複雑な想いを抱えながらも長門有希の本音なのだろう。 「キョンくん…さっきは怒鳴ったりしてごめんなさい… でも、キョンくんにしか涼宮さんを助ける事は出来ないと思うの。 キョンくんの素直な気持ちをちゃんと伝えて、お願い。」 今回ばかりはのらりくらりと逃げる事は許されませんよ。 きちっと責任を取るつもりで覚悟を決めて下さい。 「では、ここからが閉鎖空間の入り口です。?僕らはこれより先には進めません。 ですが、あなたならきっと大丈夫です。 いえ、あなたにしか出来ません。」 涼宮ハルヒはきっとあなただけは拒絶する事はないはずです。 何故なら、彼女はいつもあなたの傍にいてあなたと共に行動する事が 何よりも好きなのだから。 彼が一人で閉鎖空間に飛び込むのを見送るともうやれる事はない。 やはり全てを拒絶するあの空間も彼だけは受け入れてくれたようだ。 あと僕らに出来るのはただ待つのみ。 僕ら3人と森さんは激しくなった雨に打たれながら雷の音を聞いていた。 「皆さん、お車の中で待機なさってはいかがでしょう?」 森さんが愛くるしい笑顔を僕らに向けた。 あぁ~…僕だけの時にもこれくらいの柔らかい態度で接してくれたなら どれだけ機関の仕事が楽になるだろう… 朝比奈みくるは頑なに車に乗るのを拒否していた。苦い思い出があるからだろう。 まぁ、僕らも車の中で安穏と過ごすつもりは毛頭ない。 「大丈夫ですよ、森さん。僕らはここで待ちます」 「そうですか」 さっきから気になっている事を2人には聞こえないように森さんに訊ねてみた。 「…ところで森さん。彼にはなんとおっしゃったんですか?」 森さんの目が鋭く光った。 「飴と鞭、というところでしょうか。 私は訓練により精神破壊系の拷問テクニックも身に付けているから」 その時の森さんの笑顔ほど僕を凍り付かせ、震え上がらせたものはなかった。 ニッコリと微笑む悪魔のようにただただ怖かった… この人だけには悪戯心の冗談でも逆らわないでおこう。 そう心に誓った。 雷鳴が遠のき、雨脚が弱まったかと思うと街の喧噪が騒がしくなった。 さっきまで分厚い雲に覆われていた空は風と共に流れ、 雲の隙間から眩しい夕陽が顔を出している。 「どうやら彼ら二人は無事、仲直りしてくれたようですね」 今、気が付いたのだが僕はいつもの笑顔を忘れていた。 僕もそれなりに緊張していたのだろうか? 「良かったです~、キョンくんはちゃんと涼宮さんに 素直に想いを伝えたのでしょうか?」 「きっとそうでしょうね。彼は普段は鈍感極まり無い方ですが、 やる時はやる方ですから」 「…そう」 今、彼ら二人がどこにいるのかは分かりませんが、 二人の時間を邪魔するような無粋は止めておきましょう。 「さて、僕ら3人は部室にでも戻りますか?」 「そうですね~♪」 その時、森さんが僕の耳元でそっと囁いた。 「ハロウィンの件は許可がおりましたが、鶴屋家との相互不干渉の取り決めより どちらか一方が、という事になりました」 なるほど、そうですか…。 「では、きっと鶴屋家で準備して頂けると思います。 決まり次第、また連絡を入れます」 「了解致しました。あと、あなたも分かっている事だとは思いますが、 私へ報告のメールをする際、もう決して二度と絵文字は使わないように」 ハハ…そんなに気持ち悪かったのだろうか…? 嵐来りて大暴れ。 上へ下への大騒ぎ。 嵐は去りて一番星。 誓いを立てて笑い顔、 夢か現か幻か。 「ではこれより!SOS団ハロウィンパーティーを始めます!!」 結局、部室では時間が遅いと言う事で急遽、鶴屋家で お菓子と秋の味覚を取り揃えた あまりにも豪華なパーティーを催す事になった。 涼宮ハルヒと鶴屋さんはタッグを組んで朝比奈みくるに セクハラまがいの行為を繰り返している。 長門有希は相変わらず、物凄い食欲だ。 僕自身も涼宮ハルヒに渡されたドラキュラの格好をさせられている。 僕にとってSOS団のメンバーと過ごすこういう時間は かけがえの無い大切な時間となってきている。 機関の命令により、仕方無しに参加していたかつてなら 考えられなかったくらいの心境の変化だと自分でも実感している。 涼宮ハルヒはミニスカートの妖精、鶴屋さんは幽霊、朝比奈みくるは黒猫、 長門有希は魔女、そして彼はカボチャ…。 涼宮ハルヒは一体、このカボチャのコスプレをどこから持ってきたのでしょうか? 「今回もあなたに助けられましたね」 「まぁ、今回は俺が原因でもあるからな。色々すまんかったな、古泉」 「いえ。初めに話を聞いた時は機関で拘束して?拷問にでも掛けようかと思いましたがね」 本気で手配しようかと考えたくらいです…。 「で、涼宮さんとは付き合う事になったんですか?」 おやおや…せっかくの秋の味覚を吹き出してしまうなんて実に勿体ない。 「ば、馬鹿言うなよ!」 「おや?今回もキスしたんじゃないんですか?」 「しとらん!」 全く…なかなか彼ら二人は先に進んでくれませんね。 ここは一つ… 「それは……また森さんが怒りますよ」 脅しをかけておきましょう。 「キョ~ン!」 「なんだ?」 「あんた、美味しそうなもん食べてんじゃないのよ」 「やらんぞ。自分で取れ」 「ケチ!うりゃ!」 「おい、取るなよ」 「だって私、この付け合わせの甘い人参、好きなんだも~ん」 まぁ、でも今回は元の関係に修復出来ただけでも良しとしましょう。 「じゃあ、お世話になりました~!」 「良いって事さ~!今度はクリスマスだね!」 「おやすみなさ~い!」 宴もたけなわ、ですね。 来週からはしばらく期末テストに向けての試験対策。 しっかりやらないとまた森さんや機関の上層部にどやされる…。 「では、僕もこのへんで」 「…同じく」 「わたひもおうひにかえりまひゅ~」 お二人のお邪魔になるでしょうから 泥酔している朝比奈みくると長門有希は僕が送り届けますよ。 「では、涼宮さんを家まで送り届けて下さいね」 二人っきりの時間はチャンスですよ、勇気を振り絞って下さい。 「キョン!」 「はいはい。」 「はい、は一回。」 「はぁ~い。」 彼は一つ決めました。 これからはあの二人を見守っていこう。 自分が入り込めるような隙間は無い。 時には譲れず、手を出す事はあったとしても 友人として接していこう。 冬も間近な秋の夜。 空に浮かぶ星達は遠い遠い所から 優しく光を落としています。 彼は待ち望んでいます。 まだまだ遠い将来にいつか彼らと心を開き、 ただただ笑い合える日を―――― The End